「ガイジンさん」考

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外国人を「ガイジン」と呼ぶことに、英語業界などで異論が出始めたのは、もう40~50年も前のことになろう。当時私は英会話能力も初心者程度で、英語を達者に話す連中のいうことをそのまま聞いているしかなかった。

しかし、その後幾多の外国人と仕事をしてくると、第三者には「外国人」というより「ガイジンさん」と言った方が、そこに彼らはいないにしても、彼らへの親しみ感があっていいように思う。「ガイジン」には別に彼らを蔑視する意味は毛頭、含めていない。「外国人」と言うと、なにか鯱張った(しゃちほこばった)感じがする。もちろん、対面で話すときには相手の名前を言うのはあたりまえのことである。

当ブログでは、この話題に関した、私が以前に自分のfacebookへ掲載した記事を編集した。

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1. 「よそもの」と「ガイジン」 


 日本人は、自分たちの知らない社会から来た者を「よそもの」という。お互いに初めのうちは口をきくことにもぎくしゃくする。受け入れる方は、自分達の既存の平穏なる社会に、その者が危害を加えたり、その社会運営に支障を来すような言動をするのではないかと危惧するのだ。

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 それが日本人以外の者になると、どこの国の人であろうと、十把一絡げでガイジンと呼んできた。しかし、数十年前に外資系企業に勤めるようになった頃、ガイジンは害人に繋がるから、外国人と呼ぶのが正しい、とメディアも識者と呼ばれたい連中もそう言い出した。私はそのころ、英会話もできないし、外国人とサシで対応することもないから、そういうモンだと思って、長年、外国人というように言ったり、書いたりしてきた。


 しかし、その後幾多の外国人と仕事をしてきて、最近はそんなこたぁない、と思うようになってきた。日本語が解ろうが解るまいが、ガイジンさんと呼ばれて害に繋がると思って不快感を示すガイジンさんはいなかろう。彼らには、日本語では、よその国からきた人をガイジンと呼ぶんです、以上マル、でいいと思う。


 第一、外国人ををガイジンさんと呼ぶときに、害というような悪意を込めて呼ぶ日本人などはいなかろう。私は、ガイコクジンよりガイジンさんと呼んだの方がむしろ簡略で江戸っ子弁的で粋だと思うがどうだろう。


 それよりもっといけないのは、ガイコクジンと呼ぶべきだと、まだ思っている英会話のできる連中だ。彼らは、ガイジンさんに対して you, foreign people などと無神経に言うのをしばしば耳にする。しかし、この foreign という単語には「よそもの」的な意味合いが濃厚なのだ。しかも、ガイジンさんの耳には、英語でじかに入る。


 実は私もそう使っていたのだが、あるとき親しくなった観光客のご婦人に優しく指摘された。people from different countries というのが良いらしい。日本以外の国から来たガイジンさんを 十把一絡げにするのではなくて、それぞれの国から来ているガイジンさん、という意味に理解でき、彼らの耳にもすんなりおさまるようだ。
 こういうのが、本当の「お・も・て・な・し」に違いない。2018年1月28日掲載。

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2. 「ガイジンさん」考 


 むかし、したり顔の誰かに、「ガイジン」は「害人」を意味する差別語だから、「外国人」というべきだと諭された。
 しかし、不思議だったのは「ガイジン」といわれた「ガイジン」さんは、日本語がわからないわけだから「害人」などとは、想起できないのではないか?

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 本稿執筆にあたって、これに関するおよそ100人の意見(書き物と動画)を、インターネットでチェックした。日本に住む外国人(日本語のわかる人、わからない人)、日本人、ハーフ、外国に住む外国人、日本人など。


 わかったことは、日本語がわからない外国人は、「ガイジン」と呼ばれても、「アッ、そう、日本ではわれわれのことをそう呼ぶんだ」位にしか感じていないこと。「ガイジン」から「害人」を想起できるガイジンさんはいない。

日本語がわからなくても「ガイジン」といわれるのはイヤ、あるいは耳につく、という外国人は、「ガイジン」には差別感が込められていることを、来日前に知っている人たちだった。


 ということは、そういう情報を海外に垂れ流した英語野郎(女性かもしれな)がいたと推測できる。「ガイジン」=「差別用語」という説明をしている「英語の差別用語」集もある。そういう差別用語説を唱える連中は、その根拠を明確にすべきだ。


 日本人どおしの会話の場合、わたしは「ガイジンさん」を推奨したい。
 外人という言葉は、もともと日本人しかいなかったところへ、幕末から明治初期に各国の外国人がたくさん来日したとき、日本人以外ということで、「ガイジン」と総称したに過ぎない。当時の日本人に彼らを差別しようなどという考えは、幕末の攘夷思想以外、まったくなかったことは、来日した多くの外国人手記に明らかである。


 面倒な理屈屋は、外人は外国人というのが正しい、などと言っているが、なぁに、相模っ原育ちだが、気持ちは江戸っ子の私としちゃあ、外国人を「ガイジンさん」と呼ぶのが粋っちゅうモンよ、と思う。江戸っ子は何でも端折っていうからねぇ。悪気はないんだよ。


 では、英語では「ガイジンさん」を何というのが良いか。一般的にはforeignerが使われている。海外に住んでいる日本人もforeigner、foreignerとよく言われるらしいし、外国人もそう呼ばれて、特別な嫌悪感を抱くことがない、と何人かが書いている。
 ただ、この言葉もTPOによっては、差別用語になる場合が、ままあると指摘する外国人もいた。


 私は、英会話や英文の中では、人に教えられたpeople from different contriesというのが、当たり障りなくていいかな、と思っている。観光土産店のお店のオバちゃんなどが日本語で外国人に呼びかける時には「ガイジンさん」でよろしいのではないかと。要は、相手に対する思いやりがあるかないか、ということかね。2020年2月2日 掲載。

3. ガイジンさんには姓で呼んでもらう  

現在、訪日外国人観光客の観光ガイドを英語でしている。これは英会話ができるから任意にしているのではなくて、全国通訳案内士という国家資格を取得したうえで通訳案内士法に基づいてしている。

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日本政府観光局が実施する試験科目としては、1次筆記試験として、語学(10ヵ国語から選択)日本歴史、日本地理、一般常識があり、すべて合格すれば、2次試験として語学の会話試験がある。すべて合格しなくて何科目か合格すれば、その科目だけは翌年の試験では免除される。

合格率は10%台だから、難しいっちゃぁ難しい。私はいろいろと事情が重なって2017年に4回目の挑戦で合格した。その時72歳で、合格同期では年齢的には上から多分3番目だったと思う。

さて、日本でのガイジンさんビジネスで、ファースト・ネームで呼ばれると、私は少なくとも自然な感情ではいられない。これを快しとはしない。ましてやその中に日本人がいて、彼(彼女)からもファースト・ネームで呼ばれたりすると、「こいつ何を考えているのだ」と思ってしまう。「昭和の青年」としては、自分をファースト・ネームで呼ばれて自然な感じでいられるのは、両親と妻だけである。

外国では相手をファースト・ネームで呼ぶのが通例である。だから、彼の地では男性からであれ、女性からであれ、ファースト・ネームで呼ばれても何の違和感もない。それが彼の地の習慣だからだ。

しかし、日本では業務上、相手をファースト・ネームで呼び合う習慣はない。私的な女性どおしではよくあることだが、それも業務上では姓+敬称で呼び合うのが公式である。日本では、男女間や男性間でファースト・ネームで呼び合うのは、特別な関係になっているときのみである。

日本では業務上でも私的にも、姓+敬称で呼び合うのが習慣である。かなり親しくなっても、男性どおしでは姓+敬称の呼び方が普通である。年上の男性が後輩男性を呼ぶとき、あるいは同年配の男性どおしがお互いを呼ぶときには敬称なしで姓だけで呼ぶが、これもよくある習慣である。

さて問題は、日本で外国人相手に観光案内や業務をするときに、彼らに自分たち日本人をファースト・ネームで呼ばせるのは、如何なものか、ということである。ファースト・ネームで呼び合うのは外国人の常ではあるので、日本で彼らをファースト・ネームで呼んでも何の問題もない。彼らも違和感を感じない。

ガイジンさんに日本人をファースト・ネームで呼ばせるのは、相手に跪きすぎやしないか。日本には日本の風習がある。それを彼らに教えてあげるのも、英語使いの使命ではないか。それを教えてあげないと、日本でもファースト・ネームで呼び合うのが普通だと思われてしまう。

目上の日本人や、会って間もない日本人をファースト・ネームで呼ぶことは「とんでもない事」だということを分かってもらう必要がある。それが文化交流というものではないか。

私は観光案内の時には、私を姓+敬称で呼ぶように「指導」?している。ファースト・ネームで呼ばれてヘラヘラしている男性日本人ガイドの気が知れない。女性ガイドは、ファースト・ネームで呼ばれても何の違和感もない。ただ、敬称「さん」はつけて欲しい。2024.09.22記。

4. ガイジンさんも喜ぶカツ丼


 私は、カツ丼を自分が英語で観光ガイドをするガイジンさんによく勧める。寿司とか天ぷらは彼らもよく知っているが、これを知っているガイジンさんはほとんどいない。日本を代表する庶民的和食と思うのだが。私がAmazon.com から電子出版している『The Best 20 of Japanese Casual Dishes』(英語)(日本の庶民的料理ベスト20選)の最初に紹介している。

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観光ガイドの中には、ガイジンさんをやたらに値段の高い牛ステーキ屋とか寿司屋、それにやしゃぶしゃぶ屋などに案内し、自分もそのご相伴にあずかるというコスッカライ輩もいるが、私はもっぱら庶民派路線だ。てんぷらなら銀座の天国なんかへ行かなくっても、天丼てんやでうまいてんぷらを1,000円以下で食べられる。

寿司屋も最初は回転寿司が入門編だ。そこで、もっと上等な寿司を味わいたいと言えば、それなりのところへ連れていく。ガイジンさんの懐具合を考えてあげるのが上等なガイドというものだ。

4-1. 自家製カツ丼

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 さて今回はカツ丼ではなく、ライスなしのカツ煮だ。私の好物。作り方は極めて簡単。何故なら味付けは市販のそばつゆだけだから。
 スーパーで揚げてある美味そうなヒレカツが目に付いた。このまま食うのも芸がない。カツ煮にしよう。子供の拳骨くらいのものが4つ入っていた。適当な大きさに切る。玉ねぎ、自宅に買い置きがあり大1個。適当にザク切り。
 普通、カツ丼には入っていないが、私が好きなのでシイタケも入れよう。中くらいのものが冷蔵庫にあった。4個。石づきを切り取り5ミリ厚くらいにスライス。
 卵は冷蔵庫に小さめのがあったので、これは3個をカップに割り入れ攪拌。クルクル回しての攪拌はダメ。円弧、円心、反対側の円弧を結ぶ直線を菜箸で素早く往復させる。これだと白身がよく切れる。盛り付けの器を出し、熱湯を張り温める。
 フライパンに、つけそばのつゆの濃さに、そばつゆと水を張り強火で沸かす。今回はそばつゆ100㏄に水200㏄の割合だった。これは好みで適当に。
 つゆが沸いたら、玉ねぎとシイタケを同時に入れ、いったん静かになったつゆが再び沸騰してきたら中火に下げる。玉ねぎがややクタッとし、シイタケに味がやや浸み込んだら、切ったカツをその上に乗せる。蓋をして、カツに熱が回ったら、溶き卵を半分かけ回し、再度蓋をする。
 卵が生から固まったら、残りの溶き卵をかけまわし、蓋をし、1分くらいしたら火を止めて、全体を余熱で蒸す。さらに1分くらいして、まだ、溶き卵の生部分が残っているうちに、全体を器に移す。
 三つ葉とか何とか青菜をパラパラとしたかったのだが、買い忘れた。【写真】では卵の生部分がないが、これはカミさんが生卵を食べないため。妥協したのよ(笑)。

5. ガイジンさんに高いものを喰わせるな!


通訳案内士が訪日ガイジンさんのガイドをする場合、食費、交通費、遠くへ行った場合の宿泊費などは、彼らが通訳案内士の分も払うのが業界の習わしだ。

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とはいえ、私の場合、食費はできるだけ安く押さえてあげる。そのために食事の行き先は居酒屋が多い。
東京から新幹線で京都へ行き、当地を案内したことがあった。この場合も、アゴ(食費)、アシ(交通費)、それにマクラ(宿泊費)はお客さまが払うことになる。そのときには、お客さまは東京でも京都でもリッツカールトン・ホテルへ泊まった【写真】。一泊二人で20万円を超す。私は、京都では1万円を頂戴して近くのアパホテルへ泊まった。


彼らは前夜、東京のホテルの寿司屋で夕食をしたが、3万円以上も支払ったという。私と行った京都の居酒屋では、彼らには珍しい日本の食べものや焼酎などを満腹になるほど楽しんだが、3人で1万5,000円くらいだった。コスパで驚くほど喜んでいただいた。


ところが通訳案内士にもいろいろな人がいる。ホテルは、宿泊費如何に関わらず、彼らと同じホテルに泊まる。寿司が喰いたい、しゃぶしゃぶが喰いたいと言えば、すぐに一流の所へ連れていく。自分も彼らと同じ値段のものを喰う。


客は、自分たちと同じ所へ泊まりなさい、同じ値段のものを食べなさい、と私の場合はいつもそう言われた。だからと言って、彼らと同レベルの宿泊、飲食をすることに私は抵抗がある。


それで、というわけではないが、外国人に、日本の安くて美味しい庶民的な食べ物を手軽に味わっていただくために、『The best 20 of Japanese Casual Dishes』というガイド書を英語で書いた。これをAmazon.comから電子書籍として販売していたが、この度、少し加筆・修正などをして自分のブログでも公開した。もちろん、無料で閲覧できる。
通訳案内士や知り合いのガイジンさんがいらっしゃる方は、ぜひ、ご活用ください。2020年2月28日掲載。

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