特別ルポ『添乗員はつらいよ』④バイキング大量食べ残しの可愛い遅刻常習姉妹

特別ルポ添乗員はつらいよ 通訳案内士/添乗員

人は見かけによらない。一見立派な中年観光客だったり、可愛い女性だったりしても、海外旅行の添乗で10日間も一緒にいると、彼らの馬脚が見えてくる。

※本記事は、著者が執筆した電子書籍をもとに、加筆・再構成したものです。
※This article is adapted from my Kindle eBook by the author.

イスタンブール旧市街

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1. 要注意・中高年女性客

 いままでの海外添乗で、いちばん若いお客さまは18歳と19歳の二人の女性のお友だち同志であった。

 二人とも身長165センチくらい、いつもジーンズかパンツルック。胸のフォルムもボリュームも、私ら『昭和の青年』世代が若かった頃の女性とは全然違う。小さい子供たちのように、いつも二人で手を繋いで、スキップなんかしたりしていたが、余計な肉がタプンタプンするようなこともなく、小鹿が跳び跳ねているように身軽だった。

 わからない事があると、いつの間にか私のところへ近づいてくるのだが、長い髪が風で私の肩に掛かったりもする。 
「ねえ、ねえ、あそこに見えるのなんですか ?」
 まるで幼稚園児のように無邪気なのだ。近接してくると乙女の(かどうかは不明だが)オーラというか香気が嗅覚をくすぐる。

 しかし、こういうときは注意が必要だ。どこか、こちらの目の届かないところから、心の貧しい中高年女性の同行観光客が見ていて、旅行後のアンケートの添乗員評価のところで、「添乗員は、若い女性ばかり相手にしていた」、と旅行代理店に「報告」するのだ。

 これを読んだ旅行代理店の、これまた愚かな係員は、お客さまのリピート参加がほしいばかりに、私を自席へ呼びつけ詰問、叱責するという茶番の繰り返しだ。
 このような、どこかの良家のお嬢さまと思われる彼女のたちだが、可愛いのは見かけだけ。よくあることだが、私の心の中では何かが崩れ去っていく。

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2. バイキング大量食べ残し

 とあるホテルのバイキング形式のディナーのときのことだ。見るともなく彼女たちを見ていると(見てくれも所作も可愛いので)、とんでもないことをしていく。

食べたいものを好きなだけ席へ持ち帰るのは、まぁ、いい。しかし、それを食べ終わらないうちに、次の料理を取りに行く。その繰り返し。最後のケーキにいたっては、山盛りに盛った数種類のケーキを、スプーンで各種1ヵ所くらいをチョンチョンとつついただけ。まぁ、親がそうなのだろう。馬鹿が馬鹿の再生産というわけだ。

彼女らの席には、料理やケーキの食べ残しが山となって残った。

 二人は同室なのだが、3日目位に私の部屋のドアがノックされた。
「あのお、シャンプー貸していただけますか ?」
ええっ? 女の子でシャンプーも持たずに海外旅行かい。

 しかし、添乗員的営業笑顔で自分が持参したシャンプーとリンスを貸した。自分が気に入っているちょいとした高級品である。こうしたジィジだって自分に適した品選びをするのに、コイツらはなんという杜撰(ずさん)な連中なのだ。男も女も、外見で中身を判断してはいけない見本そのものだ。

 さて、それは良いとして、翌日、バスのなかで、
「どうも、ありがとうございました」
と、可愛く微笑んでそれを返してくれた。夕べの私の洗髪なんぞに思いはいたっていない。えっ、何だこの軽さは。シャンプーの中味はほとんど無くなっていた。私なら旅行中使える量を、髪の長い彼女らは一夜にして、使いきってしまったのだ。ご立派というよりない。

 その日の夜、宿泊地のホテルの近くのスーパーマーケット。私は、シャンプーとリンスを買いにきて、彼女らと鉢合わせ。
「あ、シャンプーとリンス、あっちにありますよ!」
 よくいうよ。普通なら、シャンプーとリンスをワンセット買って、私に丁重に礼をいうのが筋だろうに。

 オー、ノー。添乗員は、つらいよ。

3. トルコでわがまま姉妹行方不明

 若いコといえば、この姉妹にも泣かされた。

 姉の方は大学院生、妹は大学生であった。両方ともきれいなのだが、どうにも時間にルーズだった。トルコ10日間くらいの旅での出来事であった。

 貸し切りバスで周遊するのだが、バスを下車して観光を各自自由にする。そして彼女らは、私が告げたバスへの集合時間にいつも一番遅く来る。全員が席についているのにまだ戻らない。戻ってきても他の観光客や私への「申し訳ございません」のお詫びもできない。このルーズさには、ほとほと手を焼いた。

 添乗員は、一行が、トルコはイスタンブールのアタテュルク国際空港に到着した時、現地通貨トルコ・リラへの両替をツアー客へ促す。トルコの物価とかを話し、3食分とちょっとしたお土産で1日あたりいくらくらい、緊急用が必要な人はその分もみてください、と伝える。

 カッパドキアへ来たときだ。その2人姉妹が5万円か10万円をトルコリラに両替してくれ、といってきた。小さなホテルだったので、両替はしていない。私は、自分の分くらいしかトルコリラは持っていない、と彼女らに告げた。

カッパドキア。ホテルは洞窟の中。

 すると姉の方が、
「どうして両替できないんですか?」という。
添乗員だったら、そのくらいするのが顧客サービスではないか、と迫り来る。私は、両替は添乗員の仕事ではないことをやんわりと伝えたが、彼女らにはこれは伝わらなかった。

 無計画に現地通過をガンガン使って、なくなったら、両替してくれとは、あまりにもムシがよすぎる。いい歳をして、この幼児性。金使いや着ているものからみて、裕福な家庭の子女らしいが、モラル的には親も子もグチャグチャな家庭なのだろう。金を取り上げたら何の教養もない、心の貧しい家庭一家に違いない。

 彼女らはこのことを旅行後のアンケートに書いた。添乗員は両替金くらい所持しているべきだと。バカ言ってんじゃないよ。愚かな子女の便利屋になってたまるかい。

4. 遅刻してもお詫びの言葉もなし

 この問題児の二人が行方不明になった。自由時間のあと夕食の午後七時になっても、帰って来ないのだ。観光ポイントとか、お土産屋数店舗の場所とかは知らせてある。

 ま、時間の観念や他の人への配慮がないのは、いつものことだ。他の人たちには食事を始めていただくことにした。私も現地のガイドも、彼女たちは気がかりであったが、皆さんといっしょに食事を始めた。
30分経っても帰ってこない。現地ガイドと二人で、手分けして、心当たりの場所を探すことにした。彼は土地勘もあるので、ホテルの自転車を借りて遠い方の場所を探すことにした。私はホテル近辺の土産物店を急ぎ足で探した。

 もし、見つからなかったらどうするか。これは、警察へ捜索願いを出し、添乗員は彼女らを残し、一行を予定通り移動させなければならない。

 午後8時も大分過ぎた頃、二人は大きなショッピングバッグを両手に下げてみんながいる食堂へ帰ってきた。

 例によって、彼女らは心配していた他のお客さまには、詫びの挨拶もできない。聞いたら、私が案内した地域外にある、ガイドブックに出ていたショッピングセンターへ、タクシーで往復したのだ。

 何もなかったからいいようなモンだが、もし仮に、交通事故で負傷した、あるいは街の与太者に絡まれて怪我をした、レイプされた、というような「事件」に巻き込まれたらどうなるのか。

 これは観光客の自己責任となる。彼女らが添乗員が指示した範囲外へ無断で出掛けたのは、いってみれば「離団行為」とみなすことができる。

 「離団行為」とは、例えば、海外旅行でたまたまホテルから少しの距離に(距離の長さは関係ないが)息子が海外赴任で住んでいる。そこに一泊したいときには、事前にいつからいつまでグループを離れる、つまり「離団する」という届けを書類で添乗員に提出する必要がある。その期間中のいっさいの行動は自己責任となるのだ。また、その間の食事代やホテル代は返金されない。

 これは、この彼女らの行動に当てはまる。添乗員に無断で、添乗員の指揮監督下を離れたのだ。しかし、こういう輩こそ、ことが起こったときには、旅行代理店や添乗員を責め立てるもっとも厄介な連中なのだ。

5. 制止も聞かず外出して遅刻

 この姉妹は別の日に、イスタンブールでの午前中自由時間の時、また問題を起こした。ホテルは、市街地から車で20分ほどのところにあった。午前中の自由時間を有効に使おうと、他の人たちは早めに朝食を済ませて、タクシーなどで市街地へ出かけて行った。私はそういう人たちを送り出した後ロビーにいた。

イスタンブール住宅街。

 すると件(くだん)の姉妹がエレベーターから降りてきた。朝の挨拶もすることなく、彼女らはそそくさとレストランへ入って行った。あ、この子たちは市街地へ行かないんだ。次の集合時間が近づいているし、そう、推定するのが妥当な時間だった。

 食事を終えて出てきた彼女ら、
「市街地までタクシーでどのくらいかかります?」
ときた。

 おい、こら! そういうことのないように昨夜、全員に説明しただろう! 片道20分、往復で40分。市街地で散策、散歩などには、最低30から40分は必要だろう。つまり、最低でもここから1時間半は必要なのだ。交通渋滞頭緊急事態を想定したら2時間は見なくてはならない。

 集合時間までは、もう1時間を切っているのだから、いまからタクシーで市街地に出かけるのはもう無理である。しかし彼女らは、私の説得を振り切り、タクシーで出かけて行った。案の定、出発時間に遅れる事40分。

「交通渋滞がひどくって」
何の詫びもなく、皆さんがプンプンしているバスへ乗り込んできた。

 このふたりのお蔭で、旅行後のアンケートには、「添乗員はグループ員を統率できていない」との非難が書かれた。例によって、旅行代理店の窓口社員は、
「そういう人はよくいるので、今後、十分気を付けてください!」だと。

どういう風に気を付けるか、過去の事例からヒントぐらい出してみろ! といいたい。その辺の基本的なノウハウは、旅行代理店には山ほど蓄積されているのだから、小冊子にするとか、ホームページの添乗員の頁に公開するとかして、情報の共有化を図るべきだろう。旅行代理店の社員は本当に知恵が回らない。そういう知恵がないのかも知れない。

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※本記事は、著者が執筆した電子書籍『添乗員はつらいよ』【写真】を加筆・再構成したものです。
実際のツアー現場で起きた出来事や、その後の展開については、電子書籍でより詳しく紹介しています。

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