「英語が話せれば、インバウンド・ガイドは務まる」──そう思っている人は少なくありません。実際、私も最初はそう考えていました。しかし現場に立ってみると、その考えがいかに浅かったかを思い知らされます。流暢な英会話が、必ずしも外国人観光客の信頼や評価につながるわけではないのです。では、インバウンド・ガイドに本当に求められるものは何なのか。英語力だけでは補えない“決定的な要素”について、具体例を交えてお話しします。
※本記事は、著者が執筆した電子書籍をもとに、加筆・再構成したものです。
※This article is adapted from my Kindle eBook by the author.
1. 英会話力とガイド力は別能力
インバウンドのガイド業務を考えるとき、大事なのは、英会話ができれば万事こと足りる、と思ったら大違いということだ。
つまり、英会話ができても、
- 人を楽しませるサービス精神や本人の性格
- ツアーを引っ張れる統率力
- 自分の考えや観光情報を相手にわかりやすく説明するプレゼンテーション能力
- 不慮の事態に遭遇した時の危機管理能力
などは別途必須なのだ。英会話ができるからと思っても、その能力とこの稼業の能力とは、まったく別問題だといえよう。
私は、英会話の勉強を始めたのは36歳からで、海外駐在や海外居住の経験はない。したがって、ネイティブ並みというわけにはいかない。
しかし実務では、旅行後、外国人観光客からの評価はいつも満点に近い。ガイドと訪日を希望する海外在住の外国人の国際マッチングサイトでは、人気ナンバーワンのガイドになったこともある。今なお、高位を維持している。
いまは富裕層を中心にガイドをしているが、グループ・ガイドの時も、 外国人観光客からの評価はいつも満点に近く、全国通訳案内士になってからは5点満点で4点は1回、 インバウンド添乗員の時は、約300中、10点満点で9点を付けた人は2%くらいしかいない。
海外生活の経験があり、英会話は上手な若い友人は、旅行者の旅行後のアンケートで「コミュニケーションが悪い」との評価を受け、愕然としていた。これを見ても英語さえ話せればガイドや添乗員ができるとは限らないことがわかるであろう。
晴れて全国通訳案内士に合格した人でも、それはペーパー試験と英会話(他の言語もあり)面接をパスしただけで、前述したような能力はチェックされていない。
したがって全国通訳案内士試験をパスした人でも実務ができない人や、仕事を探せない人、旅行者からの評価が良くない人は山ほどいると推察できる。
【写真説明】スロベニアからの観光客。ほぼ全員英語がわからない。私の英語説明を同行の添乗員(写真中央)がスロベニア語にして説明した。

2. 中身カラッポの英会話達人
また、実際に業務に携わっているインバウンドの添乗員や全国通訳案内士でも、国内の観光地では、いろいろと問題のある諸氏をよく見かける。
全国通訳案内士か添乗員かは外見からは判別しがたいが、外国人に英語で観光説明をしているのを、通りがかりに、しばしば耳に挟む機会がある。英語はペラペラと流暢なのだが、内容が見当違いのことを説明している人が結構いる。
ひとつは、ガイドが歴史などの体系的な勉強ができていない。つまり、大きな歴史の流れがあって、その中での各論でしょ。物事の基本というか本筋、本流があって各論なのだ。その人たちはそれを弁(わきまえ)ていない。女性にありがちな、いきなり各論の羅列説明なのだ。
単に英会話ができるだけで、トンチンカンなことを説明しているガイドもいる。こんな人は、かえって日本のことを誤ってお客さまに伝えることになるので、人前に出ない方がいい。また、いわゆるミーハー英語も止めてほしいものだ。日本の恥である。フォーマルな英語を心がけて欲しい。
私は、説明したいことは山ほどあっても、まず、それを1分間で概略を説明するように心がける。初めて来日した観光客にはそれで充分。1分は結構長い。新聞記事のように、とりあえず5W1H的なことをまず説明する。
必ずしも5W1Hとはいかないが、とにかく概略だ。各論はあとでリクエスト・ベイシス(質問があった時に答える)。自分たちが海外に行って、現地ガイドから説明を受けるときを考えてみれば、それがわかると思う。
その後、お客さまの興味の顔色を見ながら、補足説明を、ま、せいぜい2分くらいする。また、質問をしてくるお客さまは、それなりに勉強してきているので、気を抜けない。歌舞伎とか文楽、囲碁などを聞いてくる人は、往々にしてこちらより知識が豊富なことがある。
愛すべきわが同期の女性(同期とはいえ孫世代のように若い)は、外国の学校を出ていて英語のコミュニケーション能力には問題がない。しかし、外国人の旅行者の事後アンケートではコミュニケーション力がないと酷評された、と自分でも驚いている。
これを見ても英語さえ話せればガイドや添乗員ができるとは限らないことがわかるであろう。
晴れて全国通訳案内士に合格した人でも、それはペーパー試験と英会話(他の言語もあり)面接をパスしただけで、前述したような能力はチェックされていない。仕事獲得能力も、キャラクターの良し悪しも審査されない。
したがって全国通訳案内士試験をパスした人でも実務ができない人や仕事を探せない人、旅行者の評価が良くない人は山ほどいるのだ。
私は、面接のときに、単に英会話能力だけではなく、前述したように統率力、プレゼン能力、ユーモア、声の大きさなど、全国通訳案内士としての全人的な能力を審査すべきだと思う。
3. ビッグ・マップから説明
また、実際に業務に携わっている添乗員や全国通訳案内士の方でも、国内の観光地では、いろいろと問題のある諸氏をよく見かける。
全国通訳案内士か添乗員かは外見からは判別しがたいが、外国人に英語で観光説明をしているのを、通りがかりに、しばしば耳にする機会がある。英語はペラペラと流暢なのだが、内容が見当違いのことを説明している人が結構いる。
ま、歴史などの体系的な勉強ができていない。つまり、大きな歴史の流れがあって、その中での各論でしょ。ビッグ・マップ(大きい地図)があって、その中の各地の話でしょ。物事の基本というか本筋、本流があって各論なのだ。その人たちはそれを弁(わきまえ)ていない。女性にありがちな、いきなり各論の羅列説明なのだ。
私は、説明したいことは山ほどあっても、まず、それを1分間で概略を説明するように心がける。初めて来日した観光客にはそれで充分。一分は結構長い。新聞記事のようにはいかないが、とりあえず5W1H的なことをまず説明する。
必ずしも5W1Hとはいかないが、とにかく概略だ。各論はあとでリクエスト・ベイシス。自分たちが海外に行って、現地ガイドから説明を受けるときを考えてみれば、それがわかると思う。
その後、お客さまの興味の顔色を見ながら、補足説明を、ま、せいぜい2分くらいする。
質問をしてくるお客さまは、それなりに勉強してきているので、気を抜けない。歌舞伎とか文楽、囲碁などを聞いてくる人は、こちらより知識が豊富なことがある。
いつだったか、アメリカ人で2人とも大学教授というご夫婦を案内した時のことだ。明治神宮の入り口で、神道と仏教、その日本における歴史や共存について説明した。結構、突っ込んだ質問もあったが、なんとかやりくりした。後でランチの時に奥方が宗教学の教授だと分かった。ゲッ、はやく言ってよ、という時もあった。このカップルが唯一、私の評価に5段階中4を付けた。
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※本記事は、著者が執筆した電子書籍を加筆・再構成したものです。
実際のツアー現場で起きた出来事や、その後の展開については、電子書籍【写真】でより詳しく紹介しています。

