日本人は風呂好き、温泉好き

Tokyo confidential

本稿は、日本に興味がある、あるいは日本を観光で訪れたいという外国人向けに英語で書いたもの(*)の日本語訳です。
(*)https://masaato.com/furo-onsen/furo

日本人はほぼ毎日お風呂に入る

大部分の日本人は毎日風呂に入ります。仕事が終わって夕食前とか、冬の場合には就寝前とかに入り、身体を十分に温めてから就寝するようにします。身体が温まっているとよく眠れ疲労が回復します。入浴することによって、一日の疲れが癒されます。

日本の気候には、春夏秋冬といったはっきりとした四季があります。春夏は全体的に暖かく湿度があり、日中、身体は汗ばみます。この汗ばみをきれいにして、さっぱりしないと、夕食も食べる気がしませんし、寝床へ入ることもできません。日本人は古来より何よりも清潔を好む民族です。

春夏には、朝起床すると、身体が汗ばんでいることがありますので、シャワーを浴びて身体を清潔にし、気分的にもさっぱりさせます。

秋や冬は、日中に汗をかくようなことはあまりありません。それでも日本人は、毎日入浴し、身体を清潔に保ちます。入浴中、あるいは入浴後のリラックス感を楽しむのが好きです。湯船に浸かり、額に汗が出るまで温まります。

春夏秋冬、1年中を通して、風呂上がりの後、自然の風に当たったり、エアコンの冷たい風に当たることはとても気持ちの良いものです。

夜に入浴するのは、神道の禊の考えがあるからでしょう。その日の罪の汚れをその日のうちに洗い流す。そういった神道の考え根づいていると思われます。

きれいにしておくと安心できる。きれいにしておかないと不安で、不潔を好む邪霊が寄りついてきて、何事もうまくいかない気がします。そんな神道的心理が日本人にはあります。

風呂には、家庭用の風呂と、公衆浴場があります。公衆浴場には銭湯とスーパー銭湯があります。

銭湯とは、基本的には家庭に風呂がない人たちが利用する施設でした。

かつてはお風呂大好き日本人の憩いの場だった銭湯は年々少なくなっています。2017年3月末時点で全国で3900軒と、統計開始以来、初めて4000軒を割り込みました。1963年に59.1%だった家庭用の風呂普及率が、2008年には95.1%に達しました。利用料金は、大人一人が500円くらいです。

家庭用風呂は、2013年にはほぼ全世帯にゆきわたりました。つまり、体を洗って清潔を保つための入浴であれば、ほぼ家庭内で事足りるようになったということです。

スーパー銭湯は、現在、全国で2万軒くらいあります。そこでは、うたせ湯やジェットバス、ミストサウナ、漢方風呂など様々なタイプの風呂を組み合わせて楽しめるようになっています。「日帰りスパ」などとも呼ばれ、手軽なレジャーとして市民権を得ています。利用料金は、大人一人が約1,000円です。施設の充実度によりもっと高いところもあります。

風呂の歴史

日本の風呂の始まりは、川や滝で行われる沐浴の禊(みそぎ)だと言われています。禊とは神道で、罪汚れを取るための宗教儀礼です。これは水や湯で身体を清めるのが目的で、湯に浸かってゆったりと寛ぐ現在の入浴とは趣が違います。

日本には100以上の活火山があります。これにより現在では全国で約3,000もの温泉地があります。したがって宗教的な沐浴とは別に、湯に浸かってリラックスするという温泉の利用方法も昔からありました。 縄文時代(BC8,000-3,000)にも利用されていたという歴史的遺跡があります。

文献的に最も古い記録としては、712年に編纂された日本最古の歴史書『古事記』や、720年に完成した『日本書紀』に、温泉についての記載があります。

こうした文献から、道後温泉(愛媛県)、有馬温泉(兵庫県)、白浜温泉(和歌山県)の3つが「日本三古湯」と言われています。

奈良時代には、これと似たような施浴(せよく)という宗教的行事が東大寺(奈良県)などの仏教寺院で盛んに行われました。それは寺院等が貧しい人々や病人、および囚人らに浴室を開放し、入浴をさせることです。これらは、現在のような浴槽のお湯につかる入浴ではなく、蒸気で身体の汚れを浮かせて洗い流す蒸し風呂でした。

衛生施設が整っていなかった古代や中世の時代、お寺は病院としての役割も果たしており、入浴を施すことは、布教活動としても重視されていました。

風呂の効用

湯船に体を沈めて風呂に入ると次のような多くのプラス効果があります。シャワーではこのような効果は期待できません。

  • 老廃物や汗が体から抜け出る
  • 湯圧の効果で血行が促進され新陳代謝が進む
  • がん細胞は熱に弱いので、がん予防になる
  • 湯温と湯圧によるマッサージ効果がある
  • 身体が清潔になりスッキリする
  • 気持よく体も心もくつろぎストレスも取れる
  • よく眠れ、疲労が回復する

家庭用風呂の入り方

日本の標準的な家庭用風呂場には、湯船とシャワー、および洗い場があります。

家庭用風呂は次のような順序で使います。

  1. 脱衣所で衣服をすべて脱ぐ。
  2. 洗い場へ入ったら、座って、シャワーで頭、全身を隈なく流し、汗や目立った汚れを落とす。小さな椅子のようなものがあったら、それに腰かけてする。洗面器があるので、それに湯の蛇口から湯を満たし、タオルをそれに浸し、身体を洗う。使い終わったタオルは洗面器できれいに漱ぎ、固く絞っておく。
  3. 湯船に裸で浸る。湯船に入るときには、タオルなどを湯に入れない。湯船には身体以外は何を入れてもいけない。
  4. 温まったら洗い場に出て、頭、身体などをシャンプーや石鹸できれいに洗う。シャンプーやボディソープ、それにリンスなどの容器には英語で名前が表記されている。必ず、湯船の外で椅子に座って洗う。
  5. 身体の石鹸泡などをシャワーできれいに洗い流す。
  6. 湯船に浸かる。タオルなどを湯船に入れてはいけない。
  7. 湯船から出たら、シャワーを全身に浴び、タオルで身体を拭く。
  8. 湯船の湯は抜かないで、蓋をして風呂場から出る。◆注意
    ③を省略する人もいる。他人に迷惑をかけることを心良しとしない江戸っ子気質の人にはその傾向が強いです。

湯船の湯は、一人が使っても流さないで、その晩、家族全員が同じ湯に浸かります。風呂場から出るときにはシャワーで全身を洗い流します。

銭湯(公衆浴場)

    現在、日本ではほとんどの家庭に風呂がありますが、家庭風呂より銭湯が好きだという人は多いです。広々としていて気持ちがいいからです。私も会社員のころは、週末には息子を連れて銭湯へよく行きました。料金は、大人一人500円です(2023年)。

私は、観光ガイド(全国通訳案内士)として訪日外国人観光客を街中の一般的な銭湯へよくご案内します。一般の日本人と裸で一緒に風呂へ入れるので、どなたも初めての経験ですが、大変喜んでくださいます。

スーパー銭湯

銭湯の設備といえば多くの場合、浴槽と洗い場、それから脱衣所だけです。 

いっぽう、スーパー銭湯は、1985年に日本で初めてできたといわれます。普通の風呂施設に加えて、サウナやジャグジー、水風呂、露天風呂、打たせ湯、それに電気風呂など充実した入浴設備を楽しめます。また、食事処や理髪店なども併設されています。

つまり、設備を入浴に特化させているのが銭湯で、充実した設備で入浴を楽しむことができるのがスーパー銭湯といえます。普通は、水を沸かしたお湯を使いますが、中には、場所に恵まれて本当の温泉を浸かっているところもあります。料金は、設備の豊富さによりますが、だいたい大人一人1,000円です。

 

日本観光時の銭湯の利用法

このような日本独特の銭湯やスーパー銭湯では、近くの日本人と気軽に話もできますので、日本へ観光に来た折には日本文化を理解するうえでぜひ体験されることをお勧めします。ただ、日本人で英会話ができる人は5%位なのは残念なことです。しかし、そんなことは気にせずに、積極的に話し掛けてみてください。きっと、楽しいコミュニケーションができると思いますよ。

風呂場で何をしていいか、何をしたらいけないかは、周りの日本人のすることをよく見てください。

日本人は温泉も好き

 

日本は火山国であるため、温泉旅館や銭湯などの入浴施設が豊富にあります。これらの施設では、肌をきれいにする、身体を温めて疲れを癒すなどの物理的効能のほかに、気分的に心身ともにリラックスできる効能があります。

温泉は普通、温泉地の旅館やホテルに宿泊しないと入れません。しかし最近では、旅館やホテルに宿泊しなくてもそこの温泉を利用でき、食事もできる「日帰り温泉」を楽しめるようになりました。

さらに温泉地の地方自治体が銭湯のような温泉設備を運営しており、旅館やホテルの「日帰り温泉」よりずっと安い金額で楽しめることができます。

また「湯治」といって、神経痛や呼吸器、交通事故の事後治癒のための温泉治療法があります。これは1週間とか10日とか、長い場合には1ヵ月とかを温泉地の旅館に安い料金で逗留します。食事は、自炊となります。炊事設備や炊事用具は用意されています。

温泉地の普通のアパートには、自室の風呂場のほかにそのアパート専用の共同浴場があって、温泉がひいてあるところもあります。アパートの住人は24時間いつでも無料で利用できます。

以上のように、日本は環太平洋火山帯の上にあるので、全国いたるところで温泉を楽しめます。日本観光のおりには、ぜひ温泉を楽しんでください。

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