初心者向けひとり日帰り登山の14の注意点

健康/スポーツ/アウトドア

マイナスイオンいっぱいの都市近郊の低山歩きは、都会で働く人びとの心に潤いを与え、その後の活動に活力を与えます。

まだ、山歩きをしたことがない人、これから初めて見たい人に、登山の「基本の基」をご案内いたします。本稿を読み終われば、山歩きをしたことがない人でも、簡単な山歩きから1泊程度の山行まで一人でも企画できるようになります。

私は山歩きは60年ほど楽しんでおり、海外の山を歩いたこともあります。また、国内では遭難とまではいかなくとも、その寸前でヒャッしたことは何回かあります。幸いなことに、怪我や病気になったことは一度もありません。

山での自炊や、渓流の流れる音、小鳥たちのさえずりが聞き分けられるようになると、山歩きは一生、あなたの楽しみになります。

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1. 山行計画

注意点1.季 節

1年四季のうち、どのシーズンが山歩きに良いか。
むせかえるような新緑のころ、都会では見ることができない青い空や渓流の清々しさ、錦織りなす錦秋のころ、くるぶしほどの深さの雪山の山行。

どの季節にも山歩きの良さがありますが、ひとつ注意してほしいのは、初めての人は、冬に低山を歩くことは構いませんが、低山でも雪道をずっと歩くようなことは止めましょう。地形も読みにくいし、歩き方も難しいからです。つまり、怪我や遭難につながりやすいです。

ただ、頂上からの景色遠望とかは、冬が四季のうち最高です。それは、空気が冷えており、陽が出ても地面からの水蒸気が上がりにくく、空気が澄んでいるからです。

注意点2.天 候

どの季節に山を歩くにしても、天候は大事です。同じコースでも、晴天無風の日と霧や雨の日では、楽しさが天と地ほど違います。

「観天望気」といって、空や雲、自然現象をみて、やがて来る天候を予測する習慣があります。簡単な話、夕焼けだと明日は晴れだとかいうものです。「うろこ雲」が出ると雨の前兆だとかもそうです。それは別途、ネットなどで勉強してください。先人の智慧を学べて面白いです。

これから山歩きを楽しみたいという人は、若い人で、一般的には仕事についている人だと思います。山へ行く(山屋は山に行くことを「山に入る」といいます)のは休日の日でしょうから、何日か前にその日がわかると思います。

そうしたら、テレビの天気予報をよく注意してみてください。基本的に全国の天気は西から変わってきます。テレビの天気予報では、だいたい1週間先くらいまでわかりますね。予報で、山行予定日が悪天候なら、思い切ってその日の山歩きはあきらめてください。

平地では曇りの予定でも、山の上は雨や強風であることは多いです。

逆にいうと、天気予報を見て山行日を決める、というのが確実ですね。

注意点3.体力、体調とコースの選定

これは極めて大事なことです。低山でも体調にあったコースにしなくてはいけません。体調不調の時に山を登ったり下ったりすることは、身体に予想以上の負担がかかります。そんな時には、山に行ってはいけません。

私は学生のころ、学生運動の合間に仲間に内緒で八ヶ岳の真教寺尾根から赤岳を目指したことがありました。ところが前夜遅くまでビラのガリを切ったり印刷していたので、車内で爆睡はしたものの十分ではなかったのでしょう、岩場の急登に身体がついていかず、途中から下山した苦い経験があります。

頑張れば山頂まで行けたでしょうが、疲労で滑落や歩行不能の遭難は十分予測されたのでした。自分の体調が絶好調の時に山に行くようにしましょう。

ここでいう体力とは、年齢差、男女差のことです。とくに、中高年の方の山歩きは低山でも十分注意しないと、疲労により、滑落、道迷い、転倒、熱中症などで下山できず、救助隊のお世話になることになります。

私の体験から話しますと、50歳くらいまでは標準的なコースタイムよりはるかに速く歩いていました。今では、標準コースタイムの1.5倍は見ています。自分の体力をわきまえることが大切です。

山歩きはタイムレースではなく、安全第一なのです。たくさん山を歩いても、大事なのは、普通の道路へ出る最後の1歩、これが大事なのです。

注意点4.低山での遭難

関東平野の西の端に大山(1252m)というピラミッド型の山容の、江戸時代から信仰の山として知られている山があります。登山ケーブルもあって都心から小田急線でのアプローチも便利な山で、多くの観光客でにぎわっています。

この山で2,016年に81歳の女性が入山したきり下山が確認されないでいました。約2週間後、近くの山林で遺体が発見されました。

また別の男性は海外登山もしたベテランですが、同じ大山で孫と下山中、霧で道を失いました。経験者だけに、やみくもに歩き回って体力を消耗しないように、ひと晩ビバーク(緊急的に野営すること)して、翌日、好天になってから下山できましたが、これは立派な?遭難です。

山行の計画は、初めての人は経験者に聞くなどして、自分の体調の良い時に、余裕を持った距離、所要時間のコースを選びましょう。

とくに中高年の方が、これから山歩きをしようとされる場合は、単独行は「厳禁」です。最初は経験者といっしょに行きましょう。

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2. 装 備

山行には、身を守るためにいろいろな装備があります。軽登山と重装備の本格登山でも装備にはいろいろな違いがあります。

ここでは、初心者に必要な装備について説明します。

注意点5.靴

普通の靴は、平地を歩く時のものです。

山へ行くと、平地ではありません。アップダウンがあります。また、基本的に舗装されていません。拳骨ほどの石ころの道や、泥道、木の根っこを階段代わりに上るところもあります。つまり地表は舗装路のように一律ではなく、千変万化なのです。

そのような道を、長時間、都会生活より重い荷物を背負って歩くには、足への負担をできるだけ軽減しなければなりません。

そのためにはまず、靴の底が硬くなくてはいけません。薄いと路面の凹凸が足裏に響いて疲労します。また、不規則な地面で足首の思わぬねじりなどが発生しやすいので、そうならないために構造的にしっかりした靴が必要なのです。

ですから、初心者もぜひ軽登山靴を買い求めてください。どのような靴がふさわしいかは、登山用品店で専門のスタッフに聞いてください。15,000円くらいで結構なものが買えます。

初心者と本格登山者の靴の違いは、底の厚さと剛性、そして足くびの深さです。初心者の登山靴は靴底の硬さもそれほど必要ではなく、足首もくるぶしくらいまでのミドルカットでいいでしょう。

下の写真は、私が30年くらい履いたイタリア製の登山靴(右)です。古くなって痛んできたのと、重さが気になってきたので、最近、新しいものへ買い替えました(左)。新素材が使われていて、とても軽いです。15,000円以下です(笑)。

注意点6.雨 具

山行で怖いのは、雨に濡れることです。山の上ですから濡れると急に体温が奪われます。体温が下がると恐怖感が出てきます。

私は若いころ、尾瀬の燧岳へ登った時に、雨具が不備で身体が雨と低温で冷え、判断力が朦朧となり恐怖感に襲われる体験をしました。

それ以来、日帰りの低山の山行でも、山岳ブランド品の雨具上下(写真)を天候にかかわらず必ず携行します。雨に会わなくても、休憩時や早朝の防寒用には大いに役立ちますし、万が一、道に迷ってビバーク(非常時の野営)を余儀なくされるときでも「命拾いの」一品になります。


丹沢山(1,567m、神奈川県)山頂にて出発前の早朝。


フードは襟に畳み込める。


裾口は、靴を履いたまま着脱衣できるように、開くようになっている。

注意点7.衣 類

山行で体温管理は、命にかかわるくらい非常に重要です。

私は低山の山行でも、下着一式と靴下は、必ず携行します。これらはビニールの袋に入れ、輪ゴムできっちり絞めます。大げさと思われるかもしれませんが、万が一、ザックが川の水中に落ちた場合でも、下着だけは濡れないようにしているのです。山では何が起こるかわかりませんから。

注意点8.飲食料(含非常食)

【水】水も食料も、日帰りの低山ハイクではそんなに心配はいりません。
しかし、水分については、下山した時にまだ結構残っている、そのくらいの量は必要です。人がいつもたくさん歩いている人気の低山では、そんなに神経質になることはありませんが、そうではない低山では道迷いでビバークしなければならないとき、水は必須です。

いつだったか昔、日帰りの低山といっても行程がかなり長い山へ行ったときのことでした。一休みしているところへ、一組の若い男女が来て、「水が切れたので、水をくれ」といってきた。

私は、あいた口が塞げませんでした。このカップルは、服装も靴も都会生活のままでした。何の知性もないサルのような連中でした。このような連中は山へ入る資格はありません。

【非常食】日帰りの昼食は、自分で作ったお結びでも、コンビニの弁当でも、何でも構いません。しかしその他に、もし万が一、道迷いでビバークを余儀なくされた場合などに供えて、カロリーの高いチョコレートやチーズ、氷砂糖、みかんかリンゴなどは、よく持っていきます。

よく、遭難した人が、ザックに残っていたチョコレートやミカンで救助されるまでの間、食を満たしたという報道はよくありますね。

非常食は、これまで、だいたいいつも、下山した時には残っています。遠くの山に行ったときは、帰りの列車の中で酒のつまみにしています。

ま、保険みたいなものですね。

注意点9.懐中電灯

日帰り山行で、懐中電灯が必要? 普通、そう思いますね。

しかし、山行では普通でないことが起きます。

とくに秋や冬では、日没後、辺りは急に暗くなり、月夜でもない限り、本当に墨を流したように真っ暗となります。知らない山道で、どこに窪みや岩、木の根っこがあるかわかりません。

注意深く歩くと速度は遅くなり、時刻もどんどん過ぎます。恐怖感が出てきます。

私はこのような未熟な経験を、2回したことがあります。ですから、いつでも懐中電灯は持参します。

3. 歩き方

注意点10.登山者カード

登山口から山に入るときには、登山者カードがありますから、日帰りでも必ず記入して近くにある投函箱へ入れましょう。

登山者カートには、下記を記入するようになっています。
1)氏名(同行登山者)
2)住所
3)緊急連絡先
4)入山日、下山予定日
5)登山コース
6)入山者の通信手段 スマホなどの番号

なぜ必要かというと、
●万一、事故に遭ったとき、救助活動がスムーズに行われます。
●捜索活動を効率的に行うことができます。
●家族や関係者を安心させることができます。

これまでに、登山者カードを提出していたことで、無事救助された事例が数多くあります。

注意点11.コースタイム

山行のガイドの地域別地図には、「標準コースタイム」が、全行程をいくつもに細かく区切って、載っています。山行者は、自分の体力を十分承知したうえで、どこをどのように歩いて、どこで小休止、どこでランチタイムをとるかなどを考えて1日のコースを考えます。

注意点12.休憩の取り方

普通、15kgくらいの荷を背負っているときは30分を1本と呼んで、1本ごとに休憩します。荷物が軽い日帰りの低山ハイクでも、30分ごとに休憩するのがいいでしょう。

登りが急なところでは15分とか20分に1回くらいでいいでしょう。

荷が重い時は、荷を下ろして水分補給、甘いスナック補給などをして5分くらいでまた歩き始めます。長く休むと歩くのが嫌になります。

登りが急でないところでは、荷を下ろさないで、立ち休憩とし、荒い呼吸が収まったら歩き出すといいでしょう。

注意点13.歩き方

山歩きは行楽とはいえ、他の行楽と違ってスポーツです。

したがって、しゃべり続けながら歩くのは、歩き初めに身体を山歩きに馴らせることができないので勧められません。歩き初めは、一歩一歩ゆっくりと、スッスッ、ハッハッを呼吸をし、そういうリズムを身体に覚えさせることが、疲労を軽減できる歩き方です。

もう一つ大事なのは、つま先立ちで歩かないで、べた足で、一番大きい筋肉である太ももの筋肉を使って、身体を押し上げるように歩くのがコツです。

また、登り坂が終わって尾根のような比較的平坦な山道へ出たら、大股でさっさと歩くと違う筋肉も使うので、気分転換にもいいでしょう。

注意点14.1日の歩き始め時間

山道では街頭とかがなく、太陽光が明かりのすべてです。
ということから、山小屋泊まりの場合には朝4時とか5時には歩き始めます。
また、山小屋到着は午後3時とか4時です。すでに6時間も7時間も歩いているので、身体を休ませる必要があります。早く小屋に着いた方が、寝床もよいところを確保できます。そして、空身で小屋周辺の散策を楽しむといいでしょう。

したがって、日帰りの低山歩きも早朝出発が基本です。朝5時か6時には自宅を発つようにします。その日の現地で、山を出て最寄り駅には午後3時か4時には到着し、明るいうちに帰宅できるようにしたいものです。

夏山などでは、午後には地面からの水蒸気が上がったり、尾根では霧が出たりで遠望も利きませんよ。

4. まとめ

以上、初心者向けに低山の日帰り登山について説明してきました。

本文でも述べましたが、山歩きは「行楽」というよりは「スポーツ」であること、しかも場合によっては命にかかわるスポーツであることを十分意識してください。

まとめとして、次のことが言えます。
1)できれば最初は、経験者と行きましょう。
2)「登山者カード」は必ず投函しましょう。
3)非常時に備えて、地図、磁石、雨具、着替え、非常食は必ず携行しましょう。地図や磁石以外は、日帰り登山では使わないことが多いです。でも使わなくて良かったのです。「保険」だと思って必ず携行しましょう。
4)本文では述べていませんが、帰宅したら「登山日記」を書きましょう。
行先、携行品、良かったこと、困ったこと、持っていけばよかったと思った物、そのほか気が付いたことを書き込んでおきましょう。私は、「昭和の青年」ですから、ノートに書き留めておきましたが、今では、スマホなどへデジタル保存ができるので、いろいろと便利です。

こういう話がありますね。木登り名人に「何が一番難しいですか」と聞きました。名人は「地面に降りる最後の一歩だな」と答えました。

皆さんも安全なところへたどり着くまで、十分注意して山歩きをお楽しみください。

 

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