登山初心者向け東京近郊コース2本 高尾山/大山

健康/スポーツ/アウトドア

これから山歩きをしようという登山初心者向けの「お誂え向き」のコースが、東京近郊に2本あります。
両方とも、都心から近い高尾山(東京都)と大山(神奈川県)で、登り90分程度の手ごろな山です。
登山とはいえ、ま、ハイキングに毛が生えたような難易度ですが、油断は大敵です。

私の住所は、緯度的にはこの二つの山のちょうど中間、経度的にはずっと東の方にありますので、両方の山には高校生のころから何回も登っています。

両山の位置関係や東京・新宿からのアクセスは下の地図のようになります。

 

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1. 登り90分の入門コース

高尾山には、頂上へ行く登山路は8本くらいあります。どれも路面はよく整備されていて、都会で履くスニーカーでも十分です。その中で、ケーブルカーの麓の清滝駅の左横から登り始める「稲荷山コース」というのが、今回のお勧めです。
約90分で頂上に行けます。ケーブルカーには上りも下りも乗りません。

いっぽう大山の方は、ケーブルカーに乗って、降りたところから、こちらも約90分で頂上にたどり着けます。

両方のコースとも途中、眺望の素晴らしいところがあり関東平野一円を遠望できます。両山の頂上からは富士山を眺めることができます。

入門コースとはいえ、両山ともスニーカーではちょっと無理があります。軽登山靴は必要です。

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2. 高尾山・初心者コース

2-1. 高尾山ってどんな山?

高尾山は、奈良時代の天平16年(744年)に聖武天皇の勅命により東国鎮護の祈願寺として、僧・行基により開山されたと伝えられています。本尊として薬師如来が安置された高尾山薬王院があります。ケーブルカーの駅から頂上へ行く途上にあります。

紅葉の山、杉の山として親しまれ、鳥や草木の種類が豊富なことで大自然の宝庫といわれています。「明治の森高尾国定公園」に指定されており、キャンプやバーベキュー、植物の採取、鳥類の捕獲などが禁止されています。

東京都心部からの交通の便が良いことに加え、2007年にミシュラン観光ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」での3つ星評価などの影響をうけ、年間260万人もの観光客が訪れています。

2-2. コースのタイム・スケジュール

東京・新宿から高尾山へは二つのルートがあります。

1)京王線の特急で新宿から乗り換えなしで「高尾山口」まで46分です。新宿発6:57が一番早い特急です。7:43に高尾山口駅着です。運賃は大人一人片道390円です。

2)もう一つはJR中央線で、新宿駅から高尾駅まで乗り、同駅で構内乗り換えで京王線で高尾山口駅までです。

1)の方が乗り換えがないので便利です。

高尾山口駅には、売店があるので買い忘れてきた菓子類や水、雨具などを調達できます。
また、駅構内に日帰り温泉「京王高尾山温泉 極楽湯」があるので、時間があれば下山後にひと風呂浴びれば疲れも取れるでしょう。

駅改札を出て右へ、登山客が歩く方へついていくと、5分ほどでケーブルカーの「清滝駅」の前に出ます。

ここから頂上までいくには、1号路から6号路までの散策的コースとやや大変な「稲荷山コース」というのがあります。今回は、このコースをご紹介します。

2-3. 稲荷山コース

このコースは別名「見晴らし尾根コース」ともいわれ、全長3.1km、標高差398mで、標準的な上りの所要時間は90分です。主に高尾山の南斜面を右に迂回するように登ります。

登り口は、ケーブルカーの「清滝駅」の左側にあり、誰にも分るような標識が出ているので間違うことはありません。

いきなりの急登となります。5分ほど登ると小さなお宮がありますので、ここで上着を脱いだり、靴ひもの締め具合を点検したりしたら再出発です。

途中、標高400mあたりに四阿(あずまや)があります。見晴らしがよく近くの八王子市、相模原市はもとより、東京、横浜、そして冬など空気が澄んでいるときは筑波山も遠望できます。つまり、山の東の方が開けているのですね。

ここまではチョットきついかもしれませんが、ここからはなだらかな登りとなり、新緑のころのむせかえる若葉の香り、秋の紅葉、そして冬にはくるぶしほどの雪を踏みしめ、鼻歌気分で歩けます。

途中、頂上まであと何キロという標識がところどころに出ています。

頂上膝下にベンチがあり、ここでも一息入れるといいでしょう。

ここからは230何段かの階段になります。私も若い頃は一気に登れたのですが、もう、何回か休まないと登れません(笑)。

ここを登ると頂上の広場です。登り切った左が西で、天気に恵まれれば富士山がきれいに見えます。茶店や飲み物の自販機、トイレもあります。

私はこの広場でいつも、適当な場所を見つけ、ラーメンとかキムチうどんなどを担いでいったコンロや鍋で自炊して楽しみます。

帰路は、舗装されている1号路を降りていきます。途中、古くから霊山信仰や天狗信仰で知られる高尾山薬王院があります。

さらに下ると、何軒かの茶店やビヤガーデン(夏季)ケーブルカーの駅やリフトの駅があります。周囲の木々や植物を楽しみながら下山しましょう。動植物の説明板がいくつも出ています。

一本道ですから、道に沿って下ると、登山口にあったケーブルカーの駅の前に出ます。

高尾山口駅はもうすぐです。名物のとろろ蕎麦やゴマ団子など、食べ物も豊富にあります。

駅には、すでにご紹介したように日帰り温泉があるので、疲れを癒してビールというのもいいでしょう。

以上、登山初心者の入門コースです。体力のある人には、どうという山歩きではありませんが、しかし登りながらは、スッスッ、ハッハッ、とリズムをとる呼吸法を覚えましょう。たまに同行の仲間と話をするのはいいですが、話しっぱなしは良くないですね。

3. 大山・初心者コース

3-1. 大山ってどんな山?

大山は雨降山、または阿夫利山ともいわれ、丹沢山の表尾根の麓、ヤビツ峠の東に位置する単独峰です。 富士山のような三角形の美しい山容から、古くから「大山信仰」として庶民の山岳信仰の対象とされてきました。私の出身中学校や高校の校歌にも詠み込まれています。

小田急線伊勢原駅からのバス終点からケーブルカーへの乗り口までは、ずっと石段の道となっており、ちょっときついですが、丹沢山系から流れる良質な水を使った豆腐作り、民芸品としてのこま作り実演も行われています。

また、大山信仰が盛んなころの宿坊の面影を残す旅館や豆腐料理店、民芸品店が軒を並べています。大山まんじゅうも名物です。

こちらはミシュランの2つ星獲得観光地です。

3-2. コースのタイム・スケジュール

3-2-1. 新宿から登山口まで

新宿から大山の登山口駅となる伊勢原駅まで、便利なのは「快速急行」小田原行(56分)か「急行」小田原行(62分)です。急行券不要で、運賃は大人600円です。

大山のケーブルカーの始発電車は09:00ですので、遅くとも8:30までには伊勢原駅に到着できる電車に乗りましょう。

伊勢原駅では北口(進行方向右)に出ます。

階段を降りたところには売店があるので、必要なら弁当や菓子類を買うといいでしょう。

乗り場は4番で「伊10系統 大山ケーブル」行です。バス時刻表は、日中は毎時5、25、45分です。終点までは約30分、大人運賃は320円です。

バス終点からは前に書いたようにすっと階段ですが、両脇に土産店や豆腐飲食店、コマ実演製造店などがあるので、それらに気を取られているうちにケーブルカーの駅につきます。発車時刻は、毎時、00、20、40です。片道640円で約6分で阿夫利神社駅に到着です。

3-2-2. 登山口から頂上まで

ケーブルカーの上の駅は大山阿夫利神社下社の境内の端のようなところにあります。神社境内からの関東平野一円の眺めは抜群です。この神社は実は下社(しもしゃ)で、本社は頂上にあります。

持ち物や靴紐のチェックをしたら、さあ、出ましょう。

上の地図で、緑色コース(ケーブルカーを降りてから)が上り、黄色コースが下りです。下りではケーブルカーに乗りません。

下社の高度が678mで山頂が1,252mなので高度差約574m、80-90分程度かかるといわれています。山頂までは28丁に分れ、1丁毎に石柱が立っているので、数えて行くと山頂までの目安になります。

下社の左に「頂上登山口」の大きな看板があるので、ここが登山口になるのですが、実は、ここからいきなりの急な石階段となります。

急こう配の石段の後は、ひたすら上りになります。

森林の中を進みますが、途中、何か所も眺望が開けるところがあり、富士山を間近に仰いだり、相模湾や、西の方の丹沢山塊を遠望することもできます。

ベンチが何か所かにありますが、休憩は2,3回くらいでしょう。あまり休むと逆に疲れてしまいます。

頂上からの遠望は極めてよろしく、南の方の伊豆半島から左の方、相模湾、三浦半島、江の島、関東一円の眺めが素晴らしいです。とくに冬は空気が澄んでいるので、遠く筑波山まで見えます。

弁当は、冬は風をよけて陽だまりで、また、夏場は直射日光をよけられる木陰で広げるといいでしょう。

3-2-3. 頂上からの下山

下山コースは、地図の黄色いコースです。山頂からバス停まで、歩いて2時間くらい、休憩を入れても2時間半くらいです。

頂上から、「不動尻見晴台」という標識に従い、方角的には東の方へ下っていきます。ときどき見晴らしが開けて気持ちがいいです。

見晴台にはベンチもあり、眺望も開けています。

見晴らし台からは、道がそのまま下る尾根道と、右へそれる「下社」方向の道があり、「下社」方面の道へ進みます。「下社」はケーブルカーで降りたところです。

途中、吊り橋や二重滝があり目を楽しませてくれます。

「下社」からは、疲れていたら転倒事故防止のために、再びケーブルカーに乗って帰ってもいいでしょう。

まだまだ元気があれば大山寺への道を選び、山の雰囲気を味わいながら下っていきましょう。

大山寺は、奈良の東大寺を開いた良弁僧正が天平勝宝7年(755年)に開山したのに始まります。もともとは、ケーブルカーの駅の横にある阿夫利神社下社の位置にありましたが、明治時代の廃仏毀釈により現在地に移転されました。

大山寺からは40分ほどで、伊勢原駅行きのバス停に到着します。

4. どんな装備が必要か?

4-1. 歩くために

歩くためには、まず、軽登山靴をそろえましょう。軽登山靴とは、雪山や厳冬期登山以外に使う登山靴です。

【登山靴】登山靴は、まず足を守り疲労しにくくします、また捻挫などの怪我から足を守ります。何はなくともまず登山靴は必要です。

初心者の登山靴は、必ずしも登山用品店で買う必要もなく、靴のチェーン店にも軽登山靴ならかなりの品そろえがあります。ただ、登山経験者が販売員ではないので、すべて自己責任で選択・購入することになります。

【雨具・防寒具】山の天気は、四季を通して変わりやすく、気温の変化が大きいです。歩いているときは、ジョギング、あるいはそれ以上の体力を使います。休憩するときには、とくに秋冬は外気温が低く体温が取られやすいので、雨具など長袖ものを羽織る必要があります。

ですから、雨中を歩行するときはもとより、秋冬の休憩時や自炊時に防寒具として雨具を羽織る必要が出てきます。ビバーク時(緊急の野営時)には命にも関わりますので、しっかりした雨具をそろえてください。

【地図とコンパス】地図とコンパスは自分の位置確認や、周囲の山の名前の確認、遭難回避などのために必要です。本稿で紹介した高尾山や大山では、これらを頼りに歩くことはないですが、こういう優しい山からでもその使い方を身に着けていくことは大事です。

地図は書店の山や旅行の書籍コーナーで見つかります。地図は、登山用品店で実物を見て買うのもいいですし、Amazon.comで買うのもいいでしょう。

【衣類】衣類は、発汗性の良いもの、伸縮性のあるもの、秋冬には保温性の高いものが必須です。初心者が初期に歩くときは、晴天の日の日帰りが多いと思われるので、そんなに気にすることはありませんが、ジーンズなどの綿類は避けましょう。雨に濡れると、体温を奪うし、伸縮性が良くなく、膝周りが濡れて詰まり、ま、最低ですよ(笑)。

登山用のズボンは、夏用と冬用があり、それぞれの季節にふさわしい仕様となっているので、ゆくゆくは買いそろえるといいでしょう。下着類も保温性が良く、発汗性にも優れた新素材を使ったものが出回っています。

これらは、登山用品店にいくと展示されているので、実物を見て触って、専門的な販売員の説明を受けるといいでしょう。

「山を始めるぞ!」と頑張って、一気にファッショナブルな衣類一式をそろえる人がいますが、それは考え物で、経験のある人にいろいろと意見を聞いて徐々にそろえていくといいでしょう。

4-2. 遭難防止のために

山歩きの楽しみも、遭難してケガをしたり、お他人さんの力を借りて迷惑をかけては最悪です。ましては、ふとしたミスで命を落とすことがあってはなりません。しかし、山の楽しみとはそういうもので、他のスポーツと違って命にかかわることは多いのです。そこをまず、十分認識しましょう。

そのために大事なことをいくつか述べます。

【体調】体調が良くない時には、たとえ行くことになっていても、山行は中止しましょう。
体調が良くない時には、石につまずいたり、強風に煽られたりなど、チョットしたことでバランスを崩して滑落することは良くあります。

【同行者と登山者カード】単独行はできるだけ避け、二人以上で行きましょう。何かあった時にひとりではどうにもなりません。また、万が一遭難した時には、救助隊の方が、容易に、かつ効率的に捜索ができるよう、登山者カードは必ず投函しましょう。

【防寒・雨具】何回も書きますが、山では天候は、低い山でも平地での想像をはるかに超える変化をします。山では天気予報が外れるのはよくあることで、雨具がなくて雨に濡れると、体温は低下し、恐怖に見舞われます。それは判断力の欠落につながり、道を間違えたり、転倒したり、怪我をしたり、挙句の果てには行動不可能⇒遭難⇒死亡につながります。

一日晴天の予報でも、防寒具、雨具は必ず携行しましょう。夏場でも、ビニール合羽は持参しましょう。

【非常食】チョコレートひと箱が命を救ったというような遭難報道は良くあります。チョコレートや氷砂糖、パン、お結びなど、元気に下山できた折には余るほど持っていきましょう。保険と思ってください。余ってよかったね、なのです。

5. まとめ

私はこの記事で、一人でも多くの人が山歩きを好きななって欲しいと思います。山歩きは一生ものの楽しみです。極端な話、経費は交通費くらいです。食べ物代もそんなにかかりません。

ただ、本稿でも再三申し上げましたが、山歩きは行楽ではなく、死と隣り合わせのスポーツであることを十分認識してください。

私は、山道を駆け下りて、下の岩に頭をぶつけて血だらけになった若者を見ています。アルプスでは滑落していく人を見ました。

本稿でご紹介した、行楽コースのような山でも遭難者は出ていますし、死者も出ています。山に対して謙虚になり、注意深く対応すれば、山は私たちに素晴らしい経験を提供してくれます。

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