第6話 外国人のPR感覚

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◆ 沖縄上空、米軍機接触事故への外国人対応

企業に不慮の事態が起きた場合には、まず、事実を迅速に報道機関に公開するべきだ。また、責任者は、その職責の名誉と収入は、責任とセットになっていることを承知して就任すべきだし、ことある場合は、その責任を明確にすべきだ。外国人のPRセンスをみてみる。

過日、沖縄の上空で米軍機2機が接触し、不幸中の幸いにも沖縄本島への墜落の難は逃れ、県民への被害はなかった。私がここで述べたいのは、この事故の背後にある日米安全保障条約の是非の論議ではない。

このような約束事の中で起こった不慮の事故への、米軍の「事後対応」である。

事故後、米軍は事故機2機を報道機関に速やかに公開した。また、同時に米軍の報道部長が速やかに記者会見をし「事故の原因は、整備ミスである」とコメントした。

これらをテレビの画面で見た読者もいることであろう。広報の観点からすれば、私はこの「速やかさ」を評価する。

普通、日本の交通機関で同様の不慮の事故が起こった場合、当該車両や飛行機には目隠しシートがかぶされ、当事者のコメントも遅々としてなかなか公表されないことが多い。

中国では、事故のあった車両を怪我人、死者を乗せたまま即刻、ひと晩のうちに地面を掘って埋めてしまった隠蔽工作があった。

自社が事故などでパニック状態のときに、報道関係に取材されると、なかなか円滑な対応ができないものだ。イラクに人道支援で援軍を出した自衛隊の現地でのマスコミ対応がそうであったし、在外大使館がテロリストに占拠され時、現地へ飛んだ高村外務大臣(当時)
の激昂して己を失ったマスコミ対応がそうだった。

事故が起こった場合、当事者は「企業秘密」は守秘するとしても、事実の公開は、「第1報」、「続報」そして「確定情報」の順に、その時点で判明している事項を報道機関を通して公開していくことが必要である。

◆ 居直りと逃げ、三菱自の社長・会長

自動車のリコール隠しが、後から後から露呈している中(2004年頃)、リコールの対象になった車両の不備で死者が出た案件で裁判が行われている。三菱自動車の会長も社長も、その責任は自分に及ばないと罪状認否した。

宇佐美会長は「古いことは持ち出すな!」と部下を一喝したと新聞記事には出ている。全てとはいえないが「一流企業」に入社し、「出世街道」を将棋の駒のように登りあげた「成り上がり」社長の典型といえる。

自分が在任中は「臭いものには蓋」でやり過ごし、俗物的名誉欲と金欲をほしいままにする。ある役職を受けるということは、その名誉と収入が責任とセットになっていることを、コロッと忘れてとぼけている。

一生懸命働いている従業員は、たまったものではないが、そんな中にあって、三菱ふそうバス・トラックの外国人社長のコメントは注意を引いた。

「リコールの原因は、社員の個人的な過失かもしれないが、会社の責任であり、深く反省している」出資元から来ている外国人社長は、このように発言した。

三菱自に限らず、日本の企業が不祥事を起こすと、社長、会長は己の責任はどこへやら、まず自分の「保身」をはかり、責任を否定、もしくは部下などへ転嫁するのとは大違いだ。

外陸続きで、幼少のころから幾多の民族との軋轢を体験してきた外国人は、なべて論理的に思考するのに対して、日本人はほぼ単一民族で構成されている日本では「甘えの構造」の中で、ゲゼルシャフト(機能社会)の原則を忘れ、無責任な自我を主張する。日本の恥部である。

◆ きょうのまとめ

1 企業PRは、会長や社長の個人的心情の問題ではなく、その企業の経営姿勢である。企業の最高責任者は、同職を引き受けるときには、その責任もセットであることをよく認識してから引き受けるべきだ。企業の威信がかかっている。

2 企業の不祥事は、いずれ白日の下に晒される。それを隠蔽するのはその場しのぎの責任逃れでしかない。企業は社会的存在であり、代表者の私情で汚されてはならない。

◆ 参考書

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