女として(金賢姫の場合)

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山崎浩子同様、自分が置かれていた環境が間違っていた、と気づいて立ち直りつつある例として、私は最近、金賢姫(キム・ヒョンヒ)の『いま女として』 (文藝春秋刊、単行本、上下)を感動をもって読み終えた。 

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大韓航空機爆破事件(1987)

1987年にインド洋・アンダマン海上空で大韓航空機爆破事件を実行した北朝鮮の元工作員で死刑囚(後に特赦)の日本名:蜂谷真由美こと金賢姫の手記である。手記には爆破後の逮捕、バーレーンでの拘置・取調べ、本人が最も恐れていた韓国での取り調べ、そして北朝鮮政府の過ち等について述べられている。

私的感情で恐縮だが、金賢姫の顔つきや容姿に私は好感をもった。彼女が逮捕されて、口にガムテープで貼られて腕を刑事に捕えられてテレビの画面に出てきたとき【写真1】、 私は不謹慎にも「いい女」だと思った。 その後、ガムテープもとられてフルフェースで再びテレビに現れた時、やつれてはいた が、やはり「いい」という思いは変わらなかった【写真2】。 彼女の本を読もうと思ったのは、こういう、 おじさん的発想がひとつ。


【写真1】


【写真2】

もうひとつは、あまりよく解らない北朝鮮、 というか社会主義国の内情、とくに工作員(スパイ)の養成方法などを覗いてみたかったからだ。 同書によれば、南北朝鮮の統一という大義名分(というか多分ほんとうの目的)のために、あらゆる個性を抹殺させられる中で、国民ひとりひとりが資本主義をしない(という言い方があるそうだ)よう、自己批判と密告制度を確立し、いったん資本主義的罪を犯すと、本人のみならず、その咎(トガ)は一族郎党にまで及ぶという。

金日成(キム・イルソン、1923-1994、同国初代最高指導者、1948-)と金正日(キム・ジョンイル、同国第2代最高指導者、1941-2011)いう、 とてつもない権力者が作り上げた、私たちからみれば異常社会の中で、金賢姫は18歳から27歳まで、親兄弟にも解らぬよう、色恋無しで(つまり ボーイフレンドもなく、したがってキスしたこともそれ以上もなく)スパイとしてのあらゆる訓練(情報収集、敵国習慣習得、語学、護身術、射撃、その他)を積む。

彼女はスパイ教育の中で、資本主義社会では、国による食料の配給がないから、不潔な街には乞食が蔓延(ハビコ)り、淫売がたむろすると教育される。航空機爆破で逮捕されれば、韓国側へ引き渡され、性器拷問を含む極悪非道の限りを尽くした拷問で取り締まりをうける。そう教育され、それを疑ることすらできなかったのだ。それが、国家による思想統制である。

私たち日本人の父、母、あるいは祖父、祖母も、資本主義国家ではあったが、似たような軍国教育体制の下で育った。男子の予科練(海軍飛行予科練習生)への志願、女子の長刀(ナギナタ)の訓練をはじめとする臨戦体勢。それはいまから思えばバカげたことだが、当時はそれが「正常」だったのだ。

韓国へ連行された彼女は、韓国が自分が教えられた韓国ではないことを、ソウルの街をバスの窓から何回か見せられたり、取調官の優しさや人間らしさから、自ら気づいていく。 そして、 自分の中で、 それまでの価値観といろいろ葛藤するなかから「自白」に至るのである。取り調べの厳しさに 「音(ね)を上げるねをあげた」のではなかった。

最近、不惑をとっくに超えたというのに、人の幸せって何か、という高校生のようなことを考える。 金賢姫のように、正義感と自信に満ちた価値観のもとに、死にものぐるいで頑張ってきても、あるとき、
「お前のやっていることは 全然見当違いだよ」
なんていうことになると、私なんかもう、やり直す気力はないね。 

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韓国の反日教育、習ったことと現実は大違い

【編集後記】2021.06.07.記
この記事を書いた後、私は韓国財閥の錦湖(クムホ)の日本法人へ草鞋を預けることになる。韓国には当時10くらいの財閥(business group)があり、クムホは上から3、4番目くらいの規模であった。韓国には航空会社は大韓航空しかなかったが、1988年にクムホ・グループが新たに設立したのがアシアナ航空である。

私が同社の日本法人にナンバーツーとして在籍していた1996年ころは、この航空会社の他、化学、建設、タイヤ、IT関連など20社以上の企業を有していた。その後、経営悪化に伴い、アシアナ航空、クムホ・タイヤなどグループ内の基幹企業を相次いで売却、現在では中堅財閥になっている。

当時、韓国本社から社長をはじめ駐在員が何人かが日本法人へ赴任してきていた。社長以外はみな、日本語が達者だった。初めて日本駐在員となった彼らおよびその家族が驚くのは、日本人は優しいこと、街がきれいなこと、そして日本人は噓をつく人が極めて少ないことである。

これは、金賢姫が韓国がひどい国だと教育されて来たが、実際に韓国の街をバスの窓から見てみると、現実には教育内容とは大違いだったのと似ている。

駐在員の奥さんは、旦那が本国へ帰任することを嫌がっている。それは、優しい日本人や、スーパーマーケットのきれいな食品類、ファッショナブルな衣料品、高品質なパンストや化粧品、そして使い心地の良い(そうだ)生理用品などと離れたくないからだ。帰国すれば旦那の両親の面倒も見なくてはならないことも、帰国を嫌がる理由のひとつだ。

日本へ来て見ると、本国で受けた反日教育が現実とまったく違うので驚いてしまうそうだ。
資本主義の韓国でも、共産国のような反日教育が戦後延々と続いているのも、韓国の知性を疑う。

慰安婦問題にしても、日本の吉田清治という大嘘つき作家がでっち上げた内容を、もはや三流政治宣伝紙になり下がった朝日新聞が報道し始めて、韓国人が初めて騒ぎ始めるのも滑稽である。それまでは慰安婦の「イ」の字も関心がなかったのに、である。

しかし韓国にも、正常な知性を持つ人たちが出てきた。2019年に「反日種族主義」を出版し、慰安婦問題に対する韓国政府・国民の欺瞞性、「嘘」の数々を実証的に検証した李栄薫(イ・ヨンフン)らである。

彼らは抵抗に遭いながらも積極的に慰安婦問題の真相を訴求し続けている。

まとめ(教育の恐ろしさと自己検証の重要性)

【編集後記】2021.06.07.記
私は、教育は常々恐ろしいものだと思う。
教育は人の認識・思考の形態を規定してしまうからだ。
私たち日本での歴史教育も、「自虐史観」の域を脱していないし、それに気が付く人は極めて少ない。

自分たちが受けてきた教育がどういうものかは、現代ではインターネットで情報がたくさん出回っているので、高質な情報を学んで自己検証をする必要がある。

朝日新聞は、私らが学生の頃は左右両翼の誰もが一目置く新聞であった。しかし、私ら全共闘世代が記者になり経営陣に参入するようになったからか、左傾化が進行し、反日化が固定化してきた。私は仕事柄、日刊紙各紙を読んできたので、その推移がよくわかる。

かつて朝日新聞の経営陣のひとりが、朝日は「安倍内閣打倒が社是だ」と発言した。私はこの時、ああ、朝日は権力の番人ではなく、反政府という左翼プロパガンダ(宣伝)紙になり下がったと感じた。

その後、朝日新聞による慰安婦問題の誤報に次ぐ誤報はご承知の通り。日本の信用を世界的に失墜させた「禊(みそぎ)」はまだ終わっていない。引き続き朝日新聞を定期購読している人は、如何様な了見を持っているのか。購読が惰性なら、それは朝日新聞の加担者とみられても仕方なかろう。

人は誰でも、自分の考えが国際的にフェアであるか否か、認識が「事実」に基づいているか否かを検証する必要がある。

 

 

 

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