酒はぬる目の燗がいい

昭和の青年

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量がだめなら品質で。と何事においてもいえる。

齢(よわい)を重ねて、食べ物も酒もあまり量が行かないとなれば、いいものを少し、できれば気のおけない連中と一緒に、 ということになる。 昭和の青年としてはこれまでに、世界39都市に宿泊し、いろいろな酒場を探訪してきた。お酒は世界のいろいろなものを楽しんだが、うまくて、奥行きと幅があり、手軽に味わえるのはやはり清酒だろう。 といっても、清酒なら何でもいいというのではない。


写真は「しずる冷酒器セット 銀黒 」

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1.清酒のスイート・スポット

ゴルフやテニスのクラブやラケットを語るときに、「 スイート・スポットが広い、狭い」とよくいう。その伝でいけば私の清酒の好みは、スイートスポットが狭い。厳選して気に入ったものしか飲まな い。 口紅をつけていれば誰でもいい、という訳にはいかないのと同じだ。端麗にして、清酒らしい気品を好む。冬は人肌、夏はやや、あくまでも、やや冷やしたもの。 熱燗や冷酒はいけない。 清酒の香りが味わえないからだ。

1-1. 清酒の成分

清酒は普通、米と米麹、醸造用アルコール、それに醸造用糖類 (水飴)からできている (ラベルに原材料表示がしてある)。 テーブルにこぼした清酒が翌朝ベトベトしたり、飲み過ぎて胃がもたれるのは、おおかたこの水飴のせいだ。 通常、辛口といっているのは、この水飴が入っていない。人によっては、水飴が入っていないは、清酒らしくないという人もいる。

1-2. 本醸造清酒

本醸造清酒というのを聞いたことがあるでしょう。 これが普通の清酒と違う点は、まず、醸造用糖類(水飴)を使っていない点だ。私はこの本醸造酒を好む。

醸造用アルコールの使用量は普通の清酒より少なくしてある。さっぱりしている。これを一般的には「辛口」として売られている。

1-3. 純米酒

それでは純米酒とは? とくるだろう。これはね、米と米麹だけでつくった清酒のこと。簡単に言えば本醸造酒から醸造用アルコールを除去したようなものだ。米の香りというか、コクがズンとくる感じ。 好きな人は好きらし が、私はあまり好まない。

1-4. 吟醸酒

吟醸酒という言い方もあるね。これは精米の歩合よる。

精米歩合が60%以下のものを「特別本醸造酒」とか「特別純米酒」と呼び、さらに精米したものを「純米吟醸酒」とか「吟醸酒」(本醸造酒)と言う。

さらに精米を50%以下にまでしたものを「純米大吟醸酒」とか「大吟醸酒」(本醸造酒)というのだ。

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2.清酒の味わい方

さて、清酒がどうやってつくられるかが解ったら、飲み方も必然的に解ろうというものだ。

2-1. 熱 燗

「熱燗!、熱燗!」

なんてわめいてる手合いには料理酒でも燗してやれっちゅうの。清酒を熱燗にしたら味も香りもすっ飛んでしまう。

私の大先輩で清酒に明るくない人がいる。ときどきご馳走に与(あずか)るのだが、彼は吟醸酒クラスでも「熱燗で頼むよ」と仲居さん(*)にいう。気の置けない大先輩なので「あ、1本はぬる燗で」とか仲居さんに小声でお願いする。
(*) 仲居さん:現代では、料理屋、旅館などで、客に応接し、注文受け、配膳などをする女性を指す。

江戸の粋を知らないわけではない。しかし、落語などに出てくる江戸っ子はよく、
「お姐さん、熱燗頼むよ」
なんて、言っている。
彼らにとっての熱燗は清酒の味で、ではなく、江戸っ子の粋という飲み方の中に熱燗が位置づけられているのであろう。
「ってやんでぃ、熱燗でキューッとやんのが江戸っ子よ。 ぬる燗だぁ? バカ言ってんじゃねぇやぃ。 ジジイじゃあんめぇし、ベラボーメッ」
なんて聞こえてきそうだ。

2-2. ぬる燗

歌詞の
♪お酒はぬる目の燗がいい♪
というのは、酒を知っているモンの科白といえよう。 

ぬる燗からたち上る香りを鼻に受ける。口に含む。 飲まないで舌の上を転がす。 口笛を吹くような口で、 外の空気を舌を上下に少し動かしながら吸って、酒の中をくぐらせる。
酒の気品が解るだろう。そして おもむろに飲み下す。 おっと、これで終わりじゃないぜ。 ゴックンするときのフレイバーとコクを 十分味わって欲しい。これを「喉越し」 という。 いいかい、熱燗じゃ、これができねえのよ。

2-3. 冷酒

冷酒もくせ者だ。 冷酒のよさは、飲むときの冷涼感がポイントで、味は各蔵元とも工夫しているようだが、私からみれば、所詮、清酒の亜流というか邪道に過ぎない。
「よく冷やしてお飲みください」
 がよくない。 冷酒を常温で飲んでみな。常温で味わえない酒なんて酒じゃないね。

2-4. 銘柄に騙されるな

銘柄に騙されてもいけない。 ファッションでも酒でも需要が生産を圧迫してくれば、生産者としては品質を下げてもこれに応えようとするのはコマーシャリズムの常。いい清酒が旨いといわれるのは、自家醸造といってその蔵元だけで醸造しているときだ。 

よく全国銘柄で需要が増えると、その蔵元は「桶買い 」といって他の小さな蔵元の酒を桶ごと買う。 これを自家の酒とミックスし、出口で自社の 基準(糖度やアルコール度数、清酒度等) を数字的にクリアしていれば自社ブランドとして出荷してしまうのだ。 

業界ではごく当たり前のことだ。 清酒も見かけで判断しないで、「 こころ美人」を見つけなくてはいけない。 地酒に「こころ美人」が多いのはこの理由による。

むかし、つとに有名で銘酒といわれた某銘柄は、この手法で愛好者を裏切って昔日の人気はもはやない。

2-5. 清酒の地域特性

能書きばかりじゃ。 「よくわか〜んなイ」なんていわれそうだね。

清酒は、 一般的に北の酒は甘っぽく、コッテリしている。「爛漫」や「大平山」なんかがそうだ。 南の方へ下ればサラッとしたものが多い。「司牡丹」(高知)、「酔心」(広島)などを挙げることができる。 

私が好きなのは、 塩釜の「浦霞」だ。北のわりには端麗にして気品がある。 ブラインド・テスト (目隠しテスト) でも、たぶんわかるだろう。越後の「越乃寒梅」は、世間評もさることながら、いろいろな思い出がこもっている忘れがたい酒だ。

昔、同じ職場に若い「新潟美人」がいた。スタイルもよかった。同じ会社の軟派系の男と仲良くなってしまって、一緒に暮らし出した。私を慕ってくれていた彼女に私はアドバイスをした。
彼女は半年もしないうちにその男と別れ、新潟へ帰郷してしまった。
新潟の八海山へ山仲間と登った帰路、私は東京へ帰る仲間と別れて新潟市内に住んでいる彼女に会った。彼女は、既婚男性の子を産みひとりで育てていた。
子どもを抱えた彼女と3人で歩けば、八百屋の店員などは我々3人を家族と思った。
幸いにも彼女は、子供の父親がその妻と離婚し(こどもはいなかった)、彼女と正式に結婚し今日に至っている。

前振りが長くなって恐縮だが、正式結婚した彼女は、当時、地元の人間でも入手が難しいという「越乃寒梅」を2本も送ってくれたことがあった。とても感激した。

さて、同じ越後の「久保田」や「吉乃川」も私の性(ショウ)に合っていていて美味い。

♪さかなはあぶったイカがいい。女は無口な人がいい。 灯はぼんやりともりゃいい♪

そんな店、 誰かご存じなら、ぜひご案内願いたいものだ。

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