昭和の青年の粋な飲み方

昭和の青年

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 盆暮れや仕事の打ち上げなどには、一献(イッコン) 傾ける機会が多くなる。

 しかし、何をするにも一扉 (ヒトカド)の美学は持ちたい。 広告代理店のようなトレンディな業界の人は、 これを「こだわり」といったりする。酒を嗜むにも相応の審美眼が無ければ、 ただの酔っぱらいオジン、 酒乱ギャルにすぎない。 

 昭和の青年からすると、楽しいひとときを過ごし、相手に不快感を与えない。そういう粋な飲み方がある。 それを「酒品」という。

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1.飲み方の美学、酒席での所作

 酒を飲むといろいろと気が緩んでくるから、失敗をしでかす。 人にいえない、 思い出したくもないような 経験は誰にもあることだろう。 それが自分だけに帰結するようなものなら、ま、自業自得だから、 しょうがない。 乗り過ごしとか忘れ物とか、その類だ(*4.へ)。

 しかし、 他人を巻き込むような不快な酔い方は絶対にやめて欲しいものだ。酔うと豹変して吼えまくり、 悪態をつく。 ま、 最低だね。 私は この手の連中は次からは誘わない。誘われても相手に悟られないように断ってきた。

 もう一つは、酒場で知らない人と意気投合した場合、 自分の会社の肩書や出身校を口にする手合い。 これは白ける。 酒場と風呂屋と刑務所は、 前にも話したけれどみんな平等。 課長であろうと部長であろうとそれはその会社の中のちっちゃい話。 酒場じゃ関係ないの。 

 出身校が同じだからって何なんだ。 先輩風を吹かせるな。 後輩としてゴロニャンしてくるな。 広告代理店や外注先の前で、クライアント風を吹かせるやつもいやだね。 みんなイーコル(イコールは日本語発音)なの。 せいぜい自分より年上そうな人には敬意を払い、 若そうな人にも、敬語で話していれば、 まず無難だね。

 さて、 酒席での所作について、ひと言っておきたいことがある。 これは私の飲み方の美学でもある。 粋に楽しく、そして美しく飲むため。

 基本的に、飲食は下品にした方が旨い。 これは真実で ある。ひとりの時はそれでもいいだろう。しかし、それでは自分以外の人がいるときはその人達に不快感を与える。 で、その不快感を避けるために 前述のように「酒品」が要求されるのだ。

1-1. お酌の仕方

 お酌の仕方。 まずビール。 酌をするとき、相手のグラスの上に瓶の口を乗せながらしない方がよろしい。 受ける方は重い。 グラ スを持っている方には、 これは軽い不快。 だから美しくない。 グラスからちょいと上げたあたりから注ぐように。 あ、 ラベルは上になるようにね。 女の子は腕の脇をガバッと開けないように。 グラスを持つ方は、 グラスをあまり寝かせないこと。 わずかに傾ければ良い、わずかで。 

 ビールは泡をかいくぐって飲む方が旨い。 泡は飲まないようにする。ひと口飲んだら、鼻の頭に泡がついているのが上手な飲み方だと、 北海道を旅した折にバスガイドから聞いた。 ビールがこぼれるからといって、グラスを傾けてチビチビ注ぐなんちゅうのもぜんぜん粋じゃない。 安酒飲みのアル中みたいだ。 女の子がこれをやっていると、何となく 育ちが判るような気がして、かわいそうな気がする。

 清酒の場合。 昔、清酒のPRの仕事をしたとき以来、日本酒とはいわなくなった。 業界の人はみんな清酒という。 ゴロ的にも、日本酒って何となくあまっぽい感じがするけど、 清酒なら辛口のスッキ リという響きがある。 私だけかも知れないが。

 お銚子に清酒がいっぱい入っているときの酌は、なかなか難しい。 ゆっくりやれば酒がお銚子の尻に廻ってポタポタという経験は誰にでもあるだろう。これは思い切りよく、エイッとばかりに一気に45度強まで傾ける。相手の杯にお銚子の先を乗せてはいけない。

 お銚子の口は小さいし、 酒の出口と空気の入り口が一緒なので、朝の電車のラッシュの乗り降りを同時にやるも同然。 絶対にドッは出てこないのだ。 杯が一杯になったら、これも、サッと調子を立てる。 尻にも回らずうまくいく。

1-2. 「お流れを頂戴します」

 先輩や上司、 顧客に酌をするときは (畳に上の場合は説明が長くなるのでここでは省略)、まず相手の左側に行く。右側に行くと昔なら刀を抜かせなくするので非礼とされている。

 お酌をするときには、何とか言うのが作法だ。 さて、なんと言う。 雰囲気と流れの具合にもよるが、ま、
「どうぞ」
ぐらいが妥当か。 

 ふだん世話になっていることのお礼をいいながらでもいい。 しかし、四角い話をすれば、 こう言うのが極め付きだろう。
 「先輩、日頃たいへんお世話になっています。ひとつ、 お流れを頂戴したいと思います

 これは、目いっぱい粋で気障なせりふだ。 誰もがいえるもんじゃない。 一歩間違えば、 ほとんど喜劇。 いわれた方だって、相応の酒宴の場数をこなし酒品あるモンでなければ、意味不明だ。 つまりダブル喜劇という訳。

 これをここでの笑い話に終わらせないために、解説をしておく。 「お流れ」 とは、 先輩の飲んだその杯で、「私にも一杯下せぇ」という意味で、その場での仮の義兄弟の堅め杯というわけ。 先輩に対する最大の敬意の表現ということだ。

 で、順序はこうだ。 まっさらな、 あるいは自分のでもいいが杯洗をくぐらせた杯を先輩に差し出す。 酌をする。 干していただく。 空いた杯に酌を受ける。 飲み干す。 これが一連の儀式だ。 

 あとはそのままそこにいて会話をしようが、あるいは同様の仕儀を望んでいる同輩に席をゆずるかは状況次第。 ただこの一連の略儀の中で、あなたが酌をする相手が、男であれ女であれ、あなたはつねに両手で杯を持つ。 例外はありません。

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2.酒席での禁止事項

 以下のことはしてはなりませぬぞ。
清酒の空き銚子ビールの空き瓶を倒して寝かしておく事、 銚子を振って中身の残量確認をする事、残り少ない銚子の酒を別の銚子へと移しかえる事。 

 いずれも貧乏たらしい。 枠ではない。くれぐれもこのようなことはしないように。お里が知れますよ。

3.大皿のフォークとスプーンの使い方

 お里が知れるといえば、 洋式の立食パーティで、 食べ物を大皿から自分の皿にとるとき、片手に自分の皿、 もう片手にはとり わけ用の大きなスプーンとフォークを著のように器用に操り得意がっている(ように見える)人がいる。

 あの方法はホテルのスタッフが客にサービスをするためにすることで、 何もわざわざ素人が真似する事ではない。 だいいちそれは自然の所作ではない。普通の人にはまずできない。欧米のパーティでは誰もそのようなことはしない。 来日した外国人も、日本人の一般客がそのようなことをするのを見て驚いていたね。

 もし片手でとるなら、 大きなピンセットのよなトングがあればそれを使えばいい。さもなければホテルの人に頼めばいい。自分でやるときは、皿をテーブルにおいて、スプーンとフォークを片手に一本ずつもって、自然に逆らわないようにやるのがベストでお洒落だ。 プロがやっているからといって、事の本質を理解しないで真似る事をサル真似という。

きょうは、 酒の話でも、口にいれる前段階のはなし。 酒そのものについても、いろいろ話したいことがある。酒とたべものの話しは楽しい。

4.(*)飲み過ぎ反省記

 30代前半のころの話。 新橋で親子ほども年の違う大先輩と飲んだ。別れてひとりで山の手線で新宿へと向かった。 

 どこをどう歩いたかは、まったく覚えていない。 寒くなってブルブルッと目が覚める。 あれ~、ここはどこ? ええ~? 3時!! 

 そこは、 JR目黒駅の東口。 駅舎からバス乗り場の方へ15段ほどの下り階段がある。毎朝ここを下りて会社方面へ向かうバスに乗る。

その階段の中段ほどのところに、 アタッシュケース (英語ではブリーフケースという場合が多い)を枕に寝ていたのだ。 当然、駅のシャッターは閉まっていた。幸い怪我もなく、金品の紛失もなかった。 安全大国ニッポン。 この時は清酒で、私の場合、清酒は首から上が重点的に酔う。

 

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