平成版 「雨夜の品定め」

昭和の青年

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いい女とはどういう女か

「嫌われるのを覚悟で、『雨夜の品定め』をお一人で」 という、きつくも心楽しいリクエストが、この『NEWPORT通信』の読者から舞い込んだ。

いうまでもなく、 『雨夜の品定め』 は、 私がいつも若い女性に読むことをお勧めしている『源氏物語』の帚木(ははきぎ)の巻 にでてくる女性品評の場面である。

季節的には現代の6月頃、平安時代のとある雨の夜、源氏と頭の中 (トウノチュウジョウ)の所へ左馬の頭(サマノカミ)、藤式部 (トウノシキブ) といった、そのころ最もファッショナブルな風流男 (ミヤビヲ)たちが集まり、「 いい女とはどういう女か」ということを語り合う行(クダリ)である。

この頃源氏は17歳、 他の連中も20歳くらいまでであるが、 結構要職に付いている。しかしお互いに、プレイボーイを自認するラブハンター。 いま流に言えば人妻レイプはお茶の子さいさいで、 自分こそは相当な女蕩(タラ)しと自惚れている。

彼らの言い分を聞いていると、 平安から平成まで約1200年を経たとはいえ、 女性感には相共通するものが多い。 たとえば、
「両親の氏素性、 教養、地位に関わりなく、下々の階級のなかにもいい 娘がいる」
「優しくて才気があるかと思うと、 多情で浮気者だったり」
「夫に愛人ができ ても、聡明な妻なら長い目でじっと忍ぶ」
あるいは、
「不細工な女でも、主人に嫌われまいとして、 化粧に気をつけ、主人の恥になるようなことをしない」
など、まあ、男の私が読んでいても、 よくいうよというほど、男に都合の良いリクワイアメント (要求事項)が多い。

中でも左馬の頭が語る妻の理想像には、 なるほどと思わせられるところがある。
-貞操観念のない妻は良くない、
-なりふり構わず家事ばかりしている妻も味気ない、
-ツーカーで話が解らない妻もうんざ りする、
-無邪気で可愛らしいだけでも頼りない、
といろいろ言ったあと、こう言う。
-ぜいたくは言わないで、家柄も身分もまあ、望まないことです。 容姿や器量なども条件から外そう。ことさらねじれた根性でさえなければ、ただいちずに生真面目で実直な女を生涯の伴侶とするのが無難だろう。その上に、何かちょっとした才芸の嗜みや気働きでも少しあれば、まあ文句は言いますまい。

自分は浮気者のくせに、女房には浮気だけはされたくないというところが、千年後の現代の亭主族とそっくりだ、と瀬戸内寂聴さんは書いている。

しかし、 私にとってはこんな女性は清酒の水割りみたいなもので、味もそっけも感じられない。 ま、 当時のように気の向くままに惚れた女とラブ繰りまくることができるのなら、喉が渇いたときの水のようにこんな女性がいいのかも知れない。

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千年後の現代の亭主族の「雨夜の品定め」

さて、平成版 『雨夜の品定め』の舞台は、新宿にあるバー 「プロイセン」。 東口の岡田屋の隣のビルの地下。昔からある古~いドイツ・バー。その奥まった一角に、I.W. ハーパーをなめてる広告代理店に勤める A. 清酒のロックを片手の業界新聞記者のB、バカーディ・ラムのロックをあおるコピーライターのC。

自分から謝る娘

「それぞれいままでで、 印象に残るいい女の話をしよう」
「酒のサカナになるいい女の話」
「白魚のような指の?」
「バカだね。おまえは。 酒のさかなは、そもそも酒菜だから、 魚は関係ないの」
「やっぱり素直な女がいい。 男と女だからいろいろあるよな。 怒鳴ったり泣きわめいたりとか。でも、あとで、なかなかゴメンっていえない。男女にかかわらずぼくの知ってるY子は、その点頭が下がった。 必ず自分から謝ってきた」
「それはいい娘だ。 そういう娘って、母親がいいんだよ、きっと」
「それはいえる。 女の子は、 どんな家庭というか両親の下で育ったかで、ずいぶん違う」 「そうだね。 代議士の娘だ、 医者の娘だと行っても、でかい口で欠伸(アクビ)をしたり、 頭をポリポリやっ たり、胸元や膝周りがだらしないのはいやだね」
「うん、連れていて嫌になる」
「まあ、氏素性が本人の立ち振る舞いを規定してしまう事もあるが、 本人の努力とか、志向性も大 きいと思うよ」

口臭娘は最低

「以前にね、ミス00 (自分の会社名) といってね、きれいな娘がいたの。 スタイルもいい、笑顔も可愛い、そのうえ才女の誉れ高かった。みんなデートに誘いたくてトライするけど、何となく往(イナ ) されてしまう。
ところが、 何かの拍子にぼくの誘いに乗ってくれたのよ。 こちとらウキウキもんで、 チョイト奮発していいとこへ食事に連れて行った。
ところが、だ、彼女、 食べるときにクチャクチ 音を立てるわけ。 まいったなー。 あれには、 百年の恋もいっぺんに興冷め。 どういう家に育った のかね。 家族みんなでクチャクチャやって育ったのかね」

「音もやだけど、口臭も嫌だね。 あるときバイトの可愛い娘が入ってきた。 昔のアグネス・チャンみたいな娘。 映画に行ったよ。始まってからややして、何となく変な臭い。 おかしいなーって、 何となく周りをうかがっていたんだ。
そしたら彼女が、私の耳元で何かいた。 ムグッ!! こいつかっ。 頭の芯までガーンと響くほど強烈だった。 もちろん二度と誘わなかったよ」
「あれは、虫歯の腐った臭いでしょう。歯の悪い人って、 本人はその臭いが日常化しているので、 自分では気がつかない。 車に乗せても、たまんないよ。 窓を開けたままにしないと」
「男でも虫歯の臭いプンプンで、おまけにタバコの臭いがミックスされているひどいのがいるよ」
「ボクの知ってる娘は、四卒で可愛くてその娘は臭くなかったけど・・・」
「キスしたの?」
「いやいや、茶化すなよ。私の先輩と結婚したわけ。 12年、一回りも年が違うんだぜ。この先輩が、 以前から口臭持ちで、なおかつ長年の独り者で汗くさい。 みんな嫌がってそばで話さなかったのよ。彼の机にある受話器も臭かった。 まさかキスもしないで夫婦できるわけないし、あれで毎日キスしてるのかね。 余計なお世話か知らないけど。みんな、彼女、よく結婚したなって言ってたよ」
「口だけじゃないだろうしね」
「バカモン、解ったような口を叩くな。しかし、いっぺんキスしちゃうと、あとは免疫ができて臭くないのかも知れないね」

「もっと他のネタない? なんか酒がまずくなりそう」
「酒乱の女も嫌だね」
「うん、話題にするのも嫌だ。酒飲めば、誰だって少しはリラックスするのだから、女の子がしっとりと、『酔っちゃったみたい』なんて潤んだんだ目でいうのは可愛い」
「酒の強い娘の中には、次の日、吐息が臭う娘がいるね、日本酒でもウイスキーでも」

「うん サイテーだね。男も同じよ。 通勤電車の中でいるでしょ。 こっちが『おえっ』ってなりそうなほどひどい臭いの人が。酒の強い人は、そうでない人に比べて、身体の中に余計
にアルコールが入るわけだから、汗、 小便、吐息、それに体臭などから臭うのが当たり前。 自分だけが臭いに気がつかないだけだよ。これは男女関係ないね」

「ぼくなんか人に会うのが商売だから、飲み過ぎた日は、家へ帰ってお茶とかお湯とかをたくさん飲む。 夜中にトイレに起きる方が、翌日、 人に嫌な臭いを嗅がせるよりいいからね。 もちろん朝はシャワーを浴びたり、頭を洗ったり、リステリン(薬用液体歯磨きの商品名)したりで大変ですよ」
「 君は清潔好きだからね」
「で、なんで彼女いないんですか?」
「うるさい。 ね、どういう娘と一緒に飲んでみたい? というか、一緒に飲んでいる娘にはどうしていて欲しい?」
「普通にしていてくれたら、それでいいよ。 女でもなく、男でもなくという感じで。話もよくする し、酒もよく飲む。 といった感じ」
「そりゃ、女っぱいほうがいいね。 楚々として、 水割り作ってくれるとか、紙ナプキンとってくれるとか、料理を小皿にとってくれるとか」

「それ、望みすぎじゃないの」
「お前なんか、あーん、なんちゃって、口にまで入れてもらうの好きなんだろ」

「悪くないね」

「嫌らしいね。 優しさ、親切さ、愛情には、公然のそれと、密室のそれがある。 人前ではそれなりにしないと」

「解りきったようなことをいうなよ。 そんじゃストリート・キッスはどうなんの」
「あれはあれでいいと思うよ。 したいときにすればいいじゃん」

止めどもなく続く平成版「雨夜の品定め」。酔いが回る饒舌がこれ以上品を落とすことを懸念して、本日はこれにて散会。

まとめ

昭和の旦那衆による「雨夜の品定め」は、「こういう女はいただけない」という話題に傾いている。これでは酒もまずかろう。異性の評価をする前に、まず、自分たちが矜持を正すべきであろう。

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