1988年から8年間、私はアメリカのタイヤメーカーGoodyear Japanで広報と広告を担当する部長職にあった。
ここにご紹介する「NEWPORT通信」は、当時、私の仕事を支えてくれていた若い仲間たちへの、生意気にも『先輩風』を吹かせた「人生ガイド」でもあった。”昭和の企業戦士”あるいは”昭和の青年”の丸ごと点描といえる。
今回の一般公開を機に、メンバーだけにしか解らない表現などは大胆に削除したり、また必要に応じて加筆や修正を行なった。
Ⅰ. ”昭和の企業戦士”の丸ごと点描
部長とはいうものの、部下は専属の秘書がひとりだけ。広告制作は広告代理店へ、PR業務はPR代理店へ、看板製作は看板業者へ、平面デザインや立体デザインはデザイン会社やフリーランサーへ、また当時日本中を沸かせたクルマのF1レースのレースクイーンと呼ばれるモデルや、東京モーターショーのモデル手配はその専門会社へ、という具合に、すべて外注することになっていた。
当時F1レースには、世界でGoodyear だけがタイヤを供給する、いわゆるワンメイク・サプライヤーの状況であった。
私は在職中毎年、鈴鹿サーキットへ1週間滞在し、F-1ドラーバーとジャーナリストとの取材セットアップなどの広報活動に多忙であった。当時の人気F-1ドライバーであるアイルトン・セナ、アラン・プロスト、そしてナイジェル・マンセルらは仕事仲間であった。
こうした外注先のスタッフは、毎日毎日、次から次へと私のデスクを訪れ、いろいろな打ち合わせをしていた。彼らどうしは私との打ち合わせの順番待ちの時に、立ち話程度はできた。しかし、もっと親密的に、かつ友好的に懇談できる機会、いわゆる「飲み会」のようなものははなかった。
私の指揮下で同じ目的のための仕事をしていただいているのだからと、私は彼らの交流機会を設けることにした。彼らはほとんどが20代で、独身男性が多かった。
一計を案じ、モデルの手配会社の女性社長にお願いして、男性数と同じ数の女性を手配していただき、懇親パーティを開くことにしたのだ。
東京・新宿の歌舞伎町での初回懇親会は大好評で、以後は納涼会と忘年会、これに私の誕生日を加え、年3回が「公式」?の懇親会となった。これ以外にも、私が参加しない小グループの飲み会が随時行われるようになった。その中から結婚するカップルも出来上がった。
後に「新津軍団」と誰ともなく呼ぶようになった年3回の公式懇親会は、2回目以降は私の秘書をしてくれていた船木(当時、敬称をつけて呼んでいなかった)が、持ち前の素晴らしい組織化能力を発揮して取りまとめてくれた。
「NEWPORT通信」は、私が折に触れて書いたものを、郵便でこうした限定メンバーに郵送していたものである。
当時はまだ、携帯できないほど大きな携帯電話が世に初めて出たころで、電子メールなども個人的には普及していなかった。したがってこの「NEWPORT通信」は、私がキーボードを叩いて、人数分をひとりで印刷し、封入し投函までしたものだ。
50通は超えていたと思う。作業も大変で、夜、仕事の後、ひとりで居残り状態でしたものだった。切手代もはじめは全部自腹であったが、後刻、
「『NEWPORT通信』を読みたい人は切手を送ってくださ~い」
と言ったところ、全員が切手を送ってくれた。自分の会社で郵便をも担当している女性は、ビックリするほどの枚数の切手を送ってくれた。
本人のみならず「母も愛読者です」という読者もいて、それはそれで嬉しかった。
当時、およそ60本ほどの記事を書いたと思うが、35年も経った今では、約10本ほどの記事は印刷物でもデジタルでも私の手元に残っていないのは残念である。
当時、私はまだ40代。35年後のいま(2021年6月)読み返してみると、生意気な表現も散見できる。どうかその辺をお含みのうえご笑読いただきたいと思います。
Ⅱ. 「NEWPORT通信」解題
「NEWPORT通信」のNEWは新、PORTは港、つまり津で、新津をもじったものでした。
ニューヨークのマンハッタン島を1周するクルージングがある。 島の東、ブルックリンあたりを基点にして、イーストリバーをのぼり ハドソン川をくだる。ハドソンはほとんどハッツォンに聞こえる。 イーストリバーを上り詰めたあたりの右岸にニューヨーク・ヤンキースのホーム・スタジアムが見える。 そこに揚げてあったタバコ 「NEWPORT」 の緑と白の屋外看板が印象的だった。
じっとその看板をみていて、
「あっ、これは私の苗字ではないか」
と気が付いた。
いつか、これを使おう、と思っていた。
なお、 NEWPORTの地名はイギリスにもアメリカにもいくつかあり、アメリカのNEWPORT JAZZ FESTIVALはあまりにも有名。
因みに、私はNon smoker です。
Ⅲ. 「NEWPORT通信」総目次
総目次は、以下のようになります。目次にはリンクが貼ってあり、順番に読まなくても好みの記事からお読みいただけます。
#1 『NEWPORT通信』の背景と総目次
#34 Johnnie Walkerを知らないロンドンの仕事仲間
#37 掲載書籍一覧
https://masaato.com/must-book-younglady/
『聖ルカ街、六月の雨』 常盤新平著
『遠いアメリカ』常盤新平著
『三国志の男たち』 (松本一男著、PHP文庫)
『三国志 英雄たちの戦い 』(守屋洋著、 同)
『三国志の人物』 (同、同)
『どといつ万葉集』 (中道風迅著、徳間書店)
『どどいつ入門』 (同、同)
『江戸の笑い』(加太こうじ著、廣済堂出版)
『極東セレナーデ』 (上、下 小林信彦著、新潮文庫)
『ビートルズをつくった男』 (レイ・コールマン著、新潮文庫)
『黒豹皆殺し、特命武装検事・黒木約介』 (門田泰明著、光文社文庫)
『挽歌』(原田康子)
『殺人者』(同)
『満月』(同)
『風の砦』(同)
『悪魔の選択』上、下、(フレデリック・フォーサイス著)
『竜馬が行く』 (司馬遼太郎著、全8巻、 新潮文庫)
『武田信玄』 ( 新田次郎著、全4巻、同)
『通夜の客』(井上靖著)
『八つ墓村』 横溝正史著
『本陣殺人事件』横溝正史著
『悪魔が来たりて笛を吹く』横溝正史著
『犬神家の一族』横溝正史著
『女王蜂』横溝正史著
『三つ首塔』 横溝正史著
『源氏物語』田辺聖子著 新潮文庫 (全3巻)
『むかし・あけぼの』(田辺聖子著、上下、角川文庫)
『 小説枕草子』 (田辺聖子著、上下、同)
『私 の好きな古典の女たち』 (瀬戸内晴海著 、新潮文庫)
https://masaato.com/kim-hyun-hee/
金賢姫(キム・ヒョンヒ)『いま女として』 (文藝春秋刊、単行本、上下)
https://masaato.com/wild-swan/
『ワイルド・スワン』(ユン・チアン著、 講談社刊 上下)
『奇妙な果実』ピリー・ホリディ自伝、晶文社刊、油井正一・大橋巨泉訳)
https://masaato.com/evaluation-heisei/
『雨夜の品定め』、『源氏物語』の帚木(ははきぎ)の巻
https://masaato.com/adatara-madison/
『マジソン郡の橋』 河出書房新社寛刊)
『わたしの源氏物語』(瀬戸内寂聴著、集英社文庫)
https://masaato.com/kazenobon/
『風の盆恋歌』(高橋治著、新潮文庫)
https://masaato.com/harlequin/
『ハーレクインロマンス』